「自転車で国内一周」が台湾で大流行のワケ 新しい台湾旅スタイル「環島」のススメ

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随所に立てられている環島1号線の看板(写真:一青 妙)

寿峠を越えられれば、環島も半分終えたようなものだ。風を切りながら、長い長い坂道を一気に下り、通称「東海岸」と呼ばれている台湾の東側に到達する。西側から東側に移った途端、見えてくる景色はさらに大きく様変わりした。無限に広がる太平洋の青さと、自然の力強さを感じさせるのが台湾の東側の魅力に違いない。

過度な都市開発がされていないため、高い建造物がほとんどない。空が高く、天気がよければ夜空には満天の星が光り輝き、虫の音が響き渡る。思う存分、太平洋沿岸に沿って走り抜いた3日間を経て、環島の一団は台北に入り、工業地帯である桃園や新竹の沿岸部の産業道路を、追い風を受けながら平均時速30キロメートルで快走して台中に戻った。

観光・グルメと一体化している「環島」

9日間も走り続ければ、さぞかし痩(や)せるだろうと思われるかもしれない。しかし、「環島は太る」が参加者の定説だ。実際のところ、私も体重が2キログラム増えた。理由はいくつかある。

1つは、旅の途中で、スタッフが休憩や食事に選ぶのは、台湾でも有名な海鮮料理やスイーツのある場所ばかり。それは、主催者側の「もてなし」の心からだ。おいしいものの魅力には勝てない。疲れているうえに、運動しているとの安心感も手伝って、多めに食べてしまうのである。

サイクリングロード「環島1号線」のルートマップ(出所:台湾交通部観光局)

加えて、サポートカーに積まれているバナナやオレンジ、お菓子などをついつい食べてしまう。仲間から勧められればさらに手が出てしまい、カロリーオーバーになるようだ。そして、私は、アルコールを飲まないが、飲む人にとっては夜のビールは何よりたまらないらしい。環島一周で数万カロリーは消費しているはずだが、どうしても痩せることにはならないようだ。環島の楽しさは、観光とも一体化しているところにもある。

台湾のインフラの多くは、日本統治時代に日本人の手によって作られたものが多い。特に鉄道の敷設は重要とされ、築100年以上の木造駅舎や、鉄道のトンネルなどが現在も残され、サイクリングロードや観光名所となっている。普段の旅行では市街地から遠いのであまり立ち寄ることのできない場所に行くことができる。

今回の環島でも、温泉地で有名な宜蘭の礁溪温泉や台東の知本温泉、涼しいトンネルを走り抜ける新北市の草嶺隧道、台湾一おいしいと評判の台南の伝統的な屋台料理店、日本統治時代に建設された雲林の西螺大橋などに立ち寄った。

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