「自転車で国内一周」が台湾で大流行のワケ 新しい台湾旅スタイル「環島」のススメ

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出発した台中に再び戻り、約900キロメートルにおよぶ私の台湾環島は無事にフィナーレを迎えた。今回、環島を共にした仲間は33人だ。私を含めた3人の日本人以外はすべて台湾人。21歳の最年少から67歳の最高齢まで、年齢も職業もさまざまだが、大部分の人が初めての環島挑戦だった。走行中以外の場所で足をケガした男性1人を除いて全員が完走を遂げた。一見すると、大変そうに見えるが、終わってみれば決してハードルの高いものではない。

一青妙さんのトークイベントが11月26日「台湾文化センター」(東京・虎ノ門、詳細はこちら)、11月30日「旅の本屋 のまど」(東京・西荻窪、詳細はこちら)、12月2日「梅田蔦屋書店」(大阪、詳細はこちら)で行われます(写真:一青 妙)

わざわざ会社を休み、家族と離れ、参加費用を払ってまで、なぜ多くの人が環島をするのか不思議でならないと、参加する前は疑問に思っていた。実際に走り始めても、なぜこんなにしんどい思いをしながら、環島しているのか、私自身がずっと考え続けた。

私は、父が台湾人のため、台湾で小学校まで教育を受けてきたが、当時1980年代の台湾は「中国人教育」が主体で、台湾の地理や歴史、人文などについてはあまり詳しく教わった記憶がない。その後は日本で生活してきていたので、台湾そのものについての知識や感性が十分ではなかった。

車や電車での旅行と違って、自転車のペダルを回しながら感じる人々の息遣いや表情が、手に取るようにリアルだ。台湾人の優しさが環島を通じて見えてくる。やがて環島は「台湾を知る」という行為であることを、次第に気づかされた。走り終わったあと、私のなかの「台湾人」の部分が、ずっと大きくなっていた。

自転車に乗っての環島という行為が、台湾では、成人を迎える若者の旅行や大学生の卒業旅行、あるいは、中・高校生の学校行事として取り入れられている。高齢者や身障者、小学生たちによる環島チャレンジも珍しくないほど、台湾社会に浸透している。

ただの台湾一周旅行のように映るかもしれないが、その背後には、そんな台湾の歴史と台湾人の想いが込められているのである。 

環島したいと思ったら

最初の自転車による環島は、年に1度の環島のサイクリングイベントである「フォルモサ900」や、台湾の環島を専門にアレンジする旅行会社のジャイアント・アドベンチャーに申し込む形で、手厚いサポートを受けながらチャレンジするのが安全かもしれない。

1度参加して慣れてくれば、個人で行くことも可能だ。台湾の環島路線には推奨ルートであることを示してくれる「ブルーライン」もしっかり描かれ、道路脇には嫌というほど「環島1号線」の標識が立っているので、スマホによるGPSの道路案内と組み合わせれば道には迷わない。

「環島」は、自転車だけでなく自動車でも鉄道でもできる(写真:一青 妙)

自転車だけではない。台湾には、同じように台湾を一周する形で、鉄道網が敷き詰められている。バス路線も日本以上に発達している。車を運転してもいい。

台湾にはさまざまなスタイルで環島を楽しめるインフラとプランが整っている。

2泊3日ではなく、少し長めに休みをとって、台湾での「環島」にチャレンジすることで、オーソドックスな旅行では見ることのできない台湾の魅力の発見につながる。「環島」は今までにない新しい台湾旅のスタイルとしてオススメである。

一青 妙 エッセイスト・女優

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ひとと たえ / Tae Hitoto

エッセイスト・女優・歯科医。台湾屈指の名家「顔家」の長男だった父と日本人の母との間に生まれ、幼少期は台湾で過ごし、11歳から日本で暮らし始める。台南市親善大使などに任命され、家族や台湾をテーマにエッセイを執筆し、著書に『私の箱子』『ママ、ごはんまだ?』(ともに講談社)『わたしの台南』(新潮社)などがある。原作を元にした日台合作映画「ママ、ごはんまだ?」のDVDが発売中。また、サイクリングを通じての日台交流に力を入れ、四国一周サイクリングPR大使もつとめる。最新作は自らの環島体験をもとに書いた『「環島」ぐるっと台湾一周の旅」』(東洋経済新報社)。

 

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