学業以外のエピソードが多い印象を受けるが、質問数が極端に多いわけではない。書くのに苦労したという学生が目立つ。だが悪い印象を持ったわけではないようだ。「書くのは大変だったが、その分、学生のことを知ろうとしてくれている姿勢を感じた」(文系・中堅私立大)という声でわかるように、「学生を理解しようとしている」という姿勢を感じとった学生が多かったようだ
この種の調査では、文系・理系で異なる企業が挙げられることが多いが、「印象に残るエントリーシート」では、上位20社のうち、文理で共通している企業がほぼ半数の9社もあった。文系学生、理系学生の両方を驚かせた、9社のエントリーシートを紹介しよう。
旭化成は3つ以上のワードを選んで作文
理系1位、文系でも2位となったのが、旭化成である。選んだ理由として、「独自の設問。指定のキーワードを使った自由作文」(理系・上位国公立大)、「語群の中から複数個選び、好きな文章を書きなさいという設問があり、何を求められているのか難しかったが、自由に思いつくままに書くことができて面白かった」(文系・旧帝大クラス)という意見が並ぶ。では、どんな課題だったのか?
「右の9つのワードのうち3つ以上のワードを用いて、自由に文章を作成してください。物語、詩、自分の考えなどどんな内容、表現方法でも結構です。(全角200字以内)<科学・熱・創造・結束・C・原理原則・大気・宿命・いぬ>」
課題が知的に謎めいていておしゃれ。センスのある学生に好かれそうだ。
資生堂は、文系で3位、理系では13位タイ、となっている。印象に残った理由は「記入事項が多かったため」(理系・上位国公立大)」。そのなかでも、「資生堂の新しい社名を考えて下さいという設問」(文系・早慶クラス)が印象的だったようだ。以下が課題の原文である。
「145年続いてきた資生堂の社名を変更する、重要なミッションをあなたにお願いします。新しい社名と、未来の社員にも語り継がれるようにその理由も説明してください。(1)社名 日本語50文字以下 (2)理由 日本語500文字以下」
「質問がユニーク」「内容が濃かった」という肯定的な声もあるが、一方で否定的な意見もある。「資生堂の新しい企業名を考えよという質問は、いったい何を評価しているのか分からなかった」(文系・早慶クラス)、「資生堂の社名を考えるという項目があり、書く気が無くなった」(文系・旧帝大クラス)。志望度の低い学生を振るい落とすのには効果があったようだが、逆に「志望度が低くても優秀な学生については、口説き落としてでも採用したい」と考えるのであれば、そうした学生とは会えなくなるリスクもある。
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