ECBの金融緩和からの「出口」はかなり難しい 量的緩和もマイナス金利も2020年まで続く

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そのうえ、ECBはQEに加えて先進国では最も深いマイナス金利を採用している。具体的にはECB預け金(超過準備および預金ファシリティ)にマイナス0.40%という金利を付している。この引き上げに着手し、プラス圏に復帰する動きが視野に入らないかぎり、本当の意味で正常化が完了したとはいえまい。だが厄介なことに、ECBは政策金利に関し、「長期(extended period of time)かつ資産買い入れ期間を大きく超えて(well past)維持する」と宣言している。要するに「QE廃止後、相当な期間が経たなければ利上げはしない」という約束である。

この約束に上述したQEに係る想定を併せ見れば、2019年3月を大きく越えてマイナス金利が維持される可能性がある。ECBの言う"well past"の定義は定かではないが、これを「6カ月」と読んだ場合、2019年9月まではマイナス0.40%という深いマイナス金利が据え置かれる可能性が出てくる。ここから、3カ月ごとに10ベーシスポイント(0.1%ポイント)ずつ順当な利上げに成功したとしても(19年12月、20年3月、6月、9月)、預金ファシリティ金利がゼロ%に到達し、プラス圏復帰が視野に入るのは2020年秋である。

さらに、QE終了、利上げ着手の次の段階としては、FRBが着手し始めたバランスシート縮小という論点が浮上してくるが、これは2021年以降の話となりそうである。つまり、正常化プロセスに関し、ECBが現在のFRBと同じくらいまで進捗するにはあと4年程度はかかりそうだ。それまで世界経済や米国経済にショックなく過ごせるのか。また、多数の脆弱な国々を抱え込むユーロ圏が現在の好調を維持できるのか。ゴルディロックス状態が極まりつつある現状を踏まえれば、あまりよい予感はしない。

次期ECB総裁は「今度こそドイツ」?

ところで、以上のような想定に基づいた場合、利上げ着手、金利のプラス圏復帰、最終的な保有資産圧縮といった難易度の高い正常化プロセスはドラギECB総裁の後任に託されることになる。ドラギECB総裁の任期が終了するのは2019年10月である。この後任人事に係る観測報道や外交上の駆け引きは2018年下期以降にヒートアップしてくるだろう。

現状では今度こそドイツ出身者、具体的には独連邦銀行(ブンデスバンク)のイェンス・バイトマン総裁になるとの声がやはり強い。オランダ(ウィム・ドイセンベルク)、フランス(ジャン=クロード・トリシェ)、イタリア(マリオ・ドラギ)と引き継がれてきた経緯を踏まえれば、「今度こそドイツ」との想定は無難である。バイトマン氏の任期が2019年4月までなので、タイミングとしても頃合いといえる。

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