ECBの金融緩和からの「出口」はかなり難しい 量的緩和もマイナス金利も2020年まで続く

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なお、前回もウェーバー元独連銀総裁が最右翼といわれながら実現しなかった経緯がある。これは同氏がタカ派的な主張を強弁してきたことで、経済環境が厳しくなっていた周縁国の支持が得られなかったことが影響したといわれる。ウェーバー氏は独連銀総裁を2011年4月に途中辞任しているが、これは国債購入を行う証券市場プログラム(2012年9月に廃止)の積極運用に抗議しての辞任との声がもっぱらであった(表向きは「個人的理由で辞任」)。

当時の政策理事会のムードを肌で感じ、ECB総裁候補を自ら降りることにした結果、イタリア出身のドラギECB総裁へとお鉢が回ってきたという話である。現在に目を転じれば、金融政策をめぐる他国との温度差に関し、バイトマン独連銀総裁の立ち位置はウェーバー氏のそれと大して変わっていない。だが、債務危機を背景とする緊張がピークに達していた当時よりは「ドイツ的な主張」が受け入れられやすくなっていることも間違いないだろう。

ドイツ人のECB総裁は危惧すべきなのか?

ちなみに次期ECB総裁候補に関し、バイトマン独連銀総裁以外ではフランスのマクロン大統領の後押しでフランソワ・ビルロワドガロー仏中銀総裁の名も取りざたされる。ドイツのメルケル首相もバイトマン独連銀総裁を強く希望しているといわれるため(もともとバイトマン氏はメルケル首相の経済顧問である)、そうなるとメルケル首相とマクロン大統領の代理戦争という様相を呈することになる。

両者のポリティカルキャピタルの差は歴然としていること、そもそもフランスはトリシェ元ECB総裁の記憶がまだ新しいことなどを踏まえれば、さすがにフランスの芽はないだろう。そのほかの候補としては、前回の2011年にはフィンランド中央銀行のリーカネン総裁やメルシュECB理事の名が取りざたされていた。だが、メルシュ理事はともかく、フィンランドもまた、タカ派主張を好む加盟国の1つである。フィンランドが容認されるならばドイツでよいという話になるのではないか。

市場参加者の視点からいえば、バイトマン独連銀総裁がECB総裁に就任すれば、ほぼ間違いなくECBのタカ派化が市場で騒がれ、欧州金利は上昇、これに伴いユーロも買われる可能性が気掛かりである。少なくとも最初のリアクションがそうなる可能性は非常に高い。だが、これは安直な反応である。政策理事会はあくまで多数決(役員会6票、各国中銀15票で計21票)であり、賛否同数の場合にのみ、ECB総裁がキャスティングボートを握る。総裁がドイツ人になったからといって、それだけで運営がタカ派化することはない。

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