著作権法を変えかねない「AI自動生成」の衝撃

本格普及するとどんな法的問題が生じるのか

相談が寄せられるのは、実際には、コンテンツ事業者に加えて、製造業や医療といった事業者もかなり多いという。「たとえば医療AIに関しては、日本には国民皆保険制度があるため、データが大量に存在し、それらを利用して精度の高いAIを生成することが考えられる。また日本はものづくり大国なので、製造業のデータもたくさんある。この2つの領域は、データがフィジカル空間(リアル空間)に存在しているため、ネット界の巨人であるGoogleやFacebookも容易に手が出せない。また、言語が関係ないという点でグローバルに展開もしやすい。現在政府も日本の強みを生かしたAIをいかに普及させていくか、という点について真剣に考え、様々なバックアップをしている」と語る。

さらに、コンテンツ系のAIを生成する際のデータを収集するうえで法的に重要なポイントとして、柿沼弁護士は、「著作権法47条の7」の存在を挙げる。これは、情報解析のために、第三者が著作権を持っているデータの記録や翻案が一定限度で可能になるというもので、営利・非営利は問わない。情報解析の名目で、原則として無許諾でデータを収集することができる(ただし、記録・翻案のみ)ため、「日本は機械学習パラダイス」(早稲田大学・上野達弘教授)と指摘する意見もある。

柿沼弁護士がよくAIの法的問題を説明するために例に挙げるものとして、「MakeGirlsMoe」というサイトがある。これは、髪の色や髪や目の色など、顔のパーツについての各種オプション情報を入力して、好みの萌えキャラを自動的に作ってくれるサービスだ。

この「MakeGirlsMoe」の判断モデルを生成する際には大量の生データが必要となるが、その際に利用されたと思われる生データが掲載されているサイトがある。生データが掲載されたサイトから、仮に無許諾でデータをダウンロードして判断モデルを生成しても法的には問題ないのか。

柿沼弁護士によると、そのような行為は著作権法47条の7によって著作権侵害にはならない、ただし、もしデータ収集先サイトとの契約(利用規約)でそのような行為が禁止されている場合に契約違反かどうかは、意見が分かれる可能性もあるということだ。

どんな場合にAI生成物が著作物になるのか

「生成フェーズ」の次に課題になるのが、「利用フェーズ」の問題だ。例えば、AIが自動的に作ったコンテンツ(絵、テキスト、動画など)の権利は誰にあるのか、あるいはAIが第三者の権利を侵害した場合に誰が責任を負うのか、といったテーマだ。

前者の問題、つまりAI生成物に著作権が発生する場合について、柿沼弁護士は「著作物とは、そもそも『思想又は感情を創作的に表現したもの』だ。人間の創作意図と創作的寄与があるものが著作物となる。創作意図や創作的寄与がある場合には、AI生成物といえどAIを道具として人間が創作したものといえ、AI生成物は当該人間(創作者)が権利を保有する著作物となる」と指摘する。

ただ、人間が創作に関わっているかどうかを判断するのは難しいケースもある。例えば、前述した「MakeGirlsMoe」の場合は、11種類のオプションから人間が選び、その判断に基づいて、自動的に萌えキャラが生成されることから、柿沼弁護士は、オプション選択行為という創作的な寄与があるといっていいのではないか、つまり、著作物といえるのではないかと考えている。

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