著作権法を変えかねない「AI自動生成」の衝撃 本格普及するとどんな法的問題が生じるのか
しかし、今後は、人間が全く指示を出さなくても、完全に自動的にコンテンツを生成するAIが登場することも考えられる。「コンテンツ業界の場合、いまの法律論では、完全自律型のAIが生成した作品の権利は誰も持っていないことになる。つまり、誰が使ってもいいという話になる。そうなると、パクリ放題なので、誰もそこに投資をしないということになりかねません」とビジネス上の課題を語る。
クリエイターは生き残ることができるのか?
今後、本格的にAIが普及すると、「生成フェーズ」、「利用フェーズ」ともに、様々な問題が噴出する可能性がある。例えば、もし、著作物だと認められるようなAI生成物がたくさん生み出されると、著作物が未だかつてない数に激増する時代がやってくることになる。
柿沼弁護士は「激増することは間違いない。既に『MakeGirlsMoe』でも、たくさんのコンテンツが作られて、SNSで拡散している。今後様々な形で広がっていくだろう。
そうすると、自由な創作活動が制限される可能性が出てくる。つまり、自分が作ったものが、ネット上で既に流通している大量のコンテンツと似てしまい、しかも『ネット上で流通していたのだからそれに依拠したのだろう』とされ、著作権侵害だと主張される可能性が高くなる。
そうすると、コンテンツを作ってウェブ上にあげておいて、同じものが出てきたら自動で照合して警告書を送って『金をよこせ』と脅すやり方が出てくるのも、そう遠い将来の話ではないだろう」と新しい問題の発生を予想する。
クリエイターに与える影響については、「BGMのようなものは、すでに人工知能が大量に生成できるようになっているので、影響はじわじわ出ている。絵を完全に自動生成するというのはまだできていないようだが、音楽だと進んでいる。使う側からしても、契約の手間がないので使いやすい。
今後は、草間彌生さんの作品のように、作った人間と結びついているようなアートじゃないと、人は価値を見出さないのかもしれない。もっとも、その一方でAIを使いこなすクリエイターが出てくる可能性もある。AIのチューニングをしたり、それについてアドバイスしたりという仕事も脚光を浴びる可能性がある」と見通しを語る。
AIの利活用に向けた課題については、国でも議論が進められている。今後の法規制の課題について、「経産省ではAI生成の際の契約のガイドラインを検討することになっているし、著作権法47条の7を人工知能に適用するための著作権法の法改正があるかもしれない」と語る。さらに、「世界的に見ても日本ではAIに関してはトップレベルの議論が行われているように思える。特に、製造業や医療では、AIをどこまで利活用できるのかが、今後各企業や日本という国の競争力に直結することになる」と、今後の議論の進展に期待を込める。
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