38歳、元阪神投手の公認会計士が悟った真実

高卒の元プロ野球選手、引退後の長い16年間

そして、2009年に短答式試験に合格。そこまではよかったが、論文式試験が僕にとって大きな壁となった。公認会計士試験では、一度短答式試験に合格すると以降2年間は短答式試験が免除になるという特典がある。合格した年を含めて3回論文式試験を受験できるということだ。この3回の受験チャンスですべて不合格になることを、俗に「三振」という。
2011年、僕は「三振」を喫してしまった。

公認会計士の学習を始めてからすでに7年。もう一度短答式試験から受験しなければならない状況に陥っていた。合格は不可能に思えた。もう受験は辞めよう。日商簿記1級や短答式試験の合格実績があれば、以前から興味のあったコンサルティングの分野にも進めるかもしれない。そんな思いも頭をよぎった。

岐阜の母や兄にも「いったい、いつまで受からない受験を続けるつもりなのか」と心配されていたし、会社の上司をはじめ誰に相談しても、「今までよく頑張った。公認会計士だけが人生じゃないよ」と、みな受験を諦めることを肯定してくれた。

ただ1人、猛反対した人がいた。「そんなふうに中途半端に道を変えてコンサルティングをやったところで、そんな気持ちでコンサルに来たあなたに頼りたい人なんているわけないでしょ!」。それは、僕が公認会計士を目指すきっかけをくれた彼女だった。

「プロ野球も公認会計士も中途半端で逃げ出したら、この先もいろいろなことに言い訳をし続ける人生になると思う。今、あなたに必要なのは何かを成し遂げたという自信。だから絶対にここで諦めたらあかん!」。目の前の困難から逃げ出そうとする僕の心を見透かして、あえて厳しい言葉で叱咤激励してくれた彼女の言葉に僕は、“合格するまで絶対に諦めない”と改めて心に誓った。

そこからもう一度受験への取り組み方を見直し、一から受験生活の見直しを考えた。テレビやゲームといった勉強に必要ないものは部屋からなくし、いつでもどこでも勉強できるようトイレやお風呂など部屋の至るところに教材を置いた。1分1秒でも無駄にはしないという思いだ。受験を最優先に考えた本当の意味でのストイックな生活に切り替えたのである。

野球と受験勉強の共通点

それまで試行錯誤を続けていた勉強方法についても画期的な気づきがあった。野球と受験勉強はそのプロセスが似ているということだ。目標達成のために、自分の課題を見つけそれを克服することが大事なのだ。野球で言えば、甲子園出場という目標を立てて、実現のためにライバル校に勝てる力をつけなければならない。そのためには自分はもっとストレートの球速を上げる必要がある。走りこみ、筋トレをするなど日々、そのためのトレーニングをしていく。

講演で話す現在の奥村氏(写真:筆者提供)

これを受験勉強に置き換えると、合格という目標に向けて、簿記の得点を伸ばす必要があるとすれば、授業を受ける、問題を解くなどの対策を行い成績を伸ばしていくということになる。

それならば野球で培ってきたものが生かせるはずだ。そう思い、投球練習の際に具体的なシチュエーションを想定するといった練習への取り組み方や、ピンチにマウンドへ上がるときのメンタルコントロールの方法などを勉強にも取り入れてみたのだ。

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