ハンドスピナーがここまで人気を呼んだ理由 「感触」「伝えたい欲求」「謎解き消費」がカギ

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アナログゲームは絶滅してしまうのではないかといわれていたけれど…

高橋:「民芸スタジアム」という47都道府県の民芸品同士を戦わせるゲームです。ゲームファンからは、ゲーム性が高いと評価してもらいました。そこには自信があります。

常見:ちなみに、ゲームの面白さってどのような要素で決まっているんでしょうか?

売れるゲームは勝率7割という法則

高橋:強い人の勝率が7割のゲームが面白いと考えています。

常見:へぇ、7割。理論があるんですか?

高橋:いえ、これはぼくの持論です。たとえば、将棋はほぼ10割強いほうが勝ちます。プロが素人に負けることはありませんよね。その分、はじめての人が挑戦するハードルが高いんです。それを勝率が7割のゲームに設計してみる。すると、弱い人でも運がよければ勝つことができるので、初心者がハマりやすい。

一方で、強い人も10割を目指して何度も戦いたくなります。ハマるゲームを作るためには、不確実性が必要だと考えています。でも、全部が運任せだと継続してやる気がなくなっていくんです。

常見:7割が絶妙なバランスなんですね。各都道府県の民芸というのも面白いですよね。自分の出身地の民芸が出てきたら楽しいですし、それをきっかけに会話も生まれます。なるほど、よく考えられている。

高橋:でも、ゲーム性とコミュニケーションだけでは、爆発的に流行しません。やはり大ヒットするためには、ゲームファンが一般の人にも教えたくならないといけません。ここにも「伝えたい欲求」がかかわってくると考えています。

ゲーム会を見ていても、みんなにゲームを教えるときの主宰者がめちゃくちゃうれしそうなんです。教える気持ちよさがないと、ゲームは普及しないんじゃないかと感じています。説明する気持ちよさまでデザインに含んだときに、これからのゲームやオモチャは大ヒットにつながると考えています。次からの開発の課題ですね。

常見:なるほど、教える喜びがあると。教えられるほうも「みんなでゲームなう」と言って、SNSについつい上げたくなるでしょう。

これから大ヒット商品を作るためには、「伝えたい欲求」までをデザインに組み込む必要があるんですね。ありがとうございました。

(構成・写真:山本ぽてと)

常見 陽平 千葉商科大学 准教授、働き方評論家

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つねみ ようへい / Yohei Tsunemi

1974年生まれ。北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。同大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。リクルート入社。バンダイ、人材コンサルティング会社を経てフリーランス活動をした後、2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師に就任。2020年4月より現職。専攻は労働社会学。大学生の就職活動、労使関係、労働問題を中心に、執筆・講演など幅広く活動中。『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など著書多数。

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