「ワンオペ育児」を単なる流行語で片付けるな 育児は「休暇」という考えは間違っている
中原:先ほどの「シラク3原則」についてなのですが、「3年間育児をやったら、3年間働いたこととみなす」という原則、とても画期的だと思いました。どうしても日本では、育児休業というと「ああ、休めていいね」といった反応になります。「いや、全然休んでるわけじゃないんだけどな……」と思うのですが。
出口:本当はその間にしっかりとキャリアを積んでいるんですけれどね。社会貢献活動ですしね。
浜屋:そして、国の制度としては「育児休業」なんですが、「育児休暇」という言い回しも結構用いられています。これはさらに、「休んでのんびりしている」というイメージですよね。
出口:育児を通して大事なことを学んでいるわけですから、いっそのこと「育児留学」にしたらどうですか?
浜屋:いいですね。次世代人材の育成を行う「育児留学」ということで。
中原:言葉って大切ですよね。
出口:そういえば、先日も、言葉って大事ですね、という話をしていました。NHKの中央放送番組審議会の大日向雅美委員長と2人で「敬老の日をなくそうよ」という話になったのです。
若者が高齢者を支える構図は間違っている
浜屋:「敬老の日」をですか。それはどうしてですか?
出口:今、日本の若い人に話を聞いたら、多くの人が「未来は暗い」と言うのです。その根拠は、これまでは若者10人で高齢者1人を支えていたのに、これからは若者1人が1人の高齢者を支える方向に向かっていきます。だから「暗いに決まってる」というわけです。
浜屋:少子高齢化が進むことで、若者には負担が大きくなっていく不安があるのですね。
出口:わたしはそもそも若者が高齢者を支える「Young Supporting Old」という考え自体が根本的に間違っていると思っています。人間は動物です。動物の中で、若者が高齢者の面倒をみている動物はどこにもいません。ヨーロッパでは、もう20年前から「All Supporting All」、みんなが社会を支えるという考え方に変わっています。
ですが、動物を見るとそれでもまだ足りません。動物の世界では高齢者が次の世代を育てています。
だから高齢者が若者を支える「Old Supporting Young」が正しい。そのためには、まず「敬老の日」をなくそう、と。大日向さんとお酒を飲みながらそんな話で盛り上がりました。これは高齢者しか言えないし、高齢者しかできないことなんです。
浜屋:お祝いされる立場にある高齢者にしか、ですか?
出口:これを若者が言ったら、年寄りが激怒するでしょ? でも、古希のわたしと、わたしより少し年上の大日向先生が言っても誰も怒らない(笑)。
浜屋:なるほど。あえて少し極端なことを言ってみることが効果的かもしれないですね。敬うという気持ちの部分は別として、社会で当たり前になってしまっているような思い込み、価値観に揺さぶりをかけるためには必要だと思います。
中原:確かに、言葉は大事ですよね。「敬老」という言葉はありますが、「子どもや若者を大事にしよう」という言葉はあまり、浮かんできませんしね。
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