ショッピングセンター開発の実績が十分にある東神開発だが、新顧客開拓の使命を受ける日本橋のプロジェクトについては、当初からテナント誘致の明確な"解"を持っていたわけではない。
東神開発の清瀬雅幸専務は、「高島屋に来たことのない、いわば『食わず嫌い』の顧客に目を向けてもらうには、どのようなテナントを誘致すればよいか」を考えに考えたという。
そこで、まず地元町内会や日本橋エリア開発の中心的な存在である三井不動産などと、対話を重ねることに重点を置いた。時には飲み会にも顔を出し、聞き取り役に徹し「日本橋の街に必要な機能は何か」を探った。
そこで浮かんできた答えが、従来の店舗で主力としているファッションではなく、「食」を全面に打ち出すという”解”だった。
日本橋ではファッションアイテムを中心とする物販はすでに充実している。またアマゾンやZOZOTOWN、楽天といったネット販売が増えていることもあり、この分野を強化しても将来的な成長を見込めなかった。
新館は半分が食関連のテナントに
一方で食分野については、「(周辺に)マンションが増えているので、これからも生活人口が増える。オフィスも数多く開業するので、オフィスワーカーも増加する。食の需要は十分にあるだろう」(清瀬専務)。
そこで東神開発は、日本橋の新店舗では食関連のテナントを充実させる方針だ。
まず、新館の6階と7階をレストランフロアにし、地下1階では総菜などの食品を販売する。そして、1階の一部分にも食品テナントを入れるという。
つまり、新館の全8フロアのうち実に4フロアを、食関連のテナントが占めることになる。
食関連の商品を求めて来店する客の利便性を考慮し、営業時間も延長する計画だ。日本橋の本店は通常、朝10時30分に開店し、夜7時30分に閉店するが、一部の店舗は朝の開店を早くし、夜の閉店も遅くする。
食関連商品を充実させると、店舗全体の客単価は従来店舗よりも低くなることが予想される。だが、高島屋はまずは集客重視で取り組む構えだ。
もくろみどおり、客数を増やして新店舗の売り上げを伸ばすことができれば、2020年前後には本館の改装に着手する可能性もありそうだ。
ただ、日本橋には東京駅を挟んで対峙する丸の内エリアほど洗練されたイメージはないのも事実。日本国道路元標がある日本橋の上には首都高速道路が覆いかぶさっているが、地下移設については国土交通省や東京都が本格的な検討を始めたばかりだ。
さらに当初、「2018年春には大規模改装を終える」としていた日本橋三越本店も、来年秋に本館1階をリモデルするだけの内容に後退している。
新機軸を盛り込んだ高島屋の都心型ショッピングセンターは、日本橋全体のイメージを向上させる役割も担っている。日本橋の未来はどうなるのか。高島屋のチャレンジはその成否を占う1つといえそうだ。
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