都市農家を待ち受ける固定資産税激増の未来 地主系お金持ちも3代続けばむしり取られる

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都市の農地は大幅に税金が抑えられていましたが……(写真:KY / PIXTA)

埼玉県南部で農家を営む家に婿入りしたAさん。自身はずっと会社勤めでしたが、10年ほど前、定年より少し早く退職し、家業を継ぐことにしました。サラリーマンから農家への転身に周りは心配しましたが、本人はいたって前向きです。

「農業は初めてですが、サラリーマン時代から、休みの日には家を手伝いながら義父の様子を見ていたので、さほど戸惑いはなかったですね。会社勤めとは違って、屋外で体を動かすのはむしろ性に合っていて、楽しんでいますよ」

そんなAさんにも1つ気がかりがあります。義父が農業を営んでいる農地の多くが「生産緑地」の指定を受けており、2022年に期限切れを迎えるのです。

義父はまだ農業を続けたいようですが、将来を考えると、一部を宅地にして賃貸マンションを建てるといった選択も考えられます。しかし、そうすると固定資産税が100倍以上にアップすると聞いてAさんはびっくり。

また、義父は祖父から農地を相続した際、相続税の納税猶予を受けており、もし宅地に転用したら利子税を含めて猶予されていた相続税を払わなければならないかもしれません。

Aさんには長男と長女がいますが、おそらく将来、農業を継ぐことはないでしょう。先々のことを考えても、一家にとって大きな決断の時期を迎えているとAさんは感じています。

大幅に税金が安く抑えられていた都市の農地

私は、相続に関する皆さまの相談に乗ることを仕事にしていますが、こうしたAさんのような相談を受けるケースが最近、増えています。拙著『500㎡以上の広い土地を引き継ぐ人のための得する相続』でも解説しているのですが、都市農家のみなさんにとって、「生産緑地」は避けて通れない重要な問題になっています。なぜなら、3大都市圏の特定市の農地について、固定資産税と相続税が大幅に軽くなる「生産緑地」制度が2022年以降、順次期限切れを迎えるからです。

「生産緑地」とは首都圏、中部圏、近畿圏の3大都市圏の特定市にある市街化区域において、農業を続けることを条件に固定資産税や相続税が大幅に安く抑えられている農地です。

市区町村が毎年課税する固定資産税について、3大都市圏の市街化区域農地は本来、周辺の宅地並みに評価されるため、税額が10アール(1000平方メートル)あたり数十万円になることも珍しくありません。

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