「72時間ホンネテレビ」が示した3つの本質

地上波が失ったものがそこにはあった

たとえば、森さんとの対面企画では、「MCなしのトーク番組をノーカットで放送する」という地上波バラエティにはない魅力であふれていました。番組としての演出や編集がほとんどないだけに、すべての言葉や間合いがホンネ。日曜朝に放送されている「ボクらの時代」(フジテレビ系)というMCのいないトーク番組が人気を集めていますが、その何歩も先を行っていたのです。

ほかの企画も完全生放送にすることで、すべてが単なるバラエティではなく、ドキュメンタリーのようになっていました。近年、視聴者の支持を集めているのは、「家、ついて行ってイイですか?」(テレビ東京系)、「ドキュメント72時間」(NHK)、「世界の果てまでイッテQ!」「1億人の大質問!? 笑ってコラえて!」(ともに日本テレビ系)などのドキュメント要素が強い番組。現在の視聴者は、台本どおりに笑いを盛り込んだバラエティよりも、「何が起きるかわからない」「決められたやり取りや、固められたキャラがない」番組を好む傾向があるため、「72時間ホンネテレビ」がハマりやすかったのです。

質の高さや笑いの手数ではなく、出演者の生き生きとした姿を見せることがテレビ番組の原点であり本質。1960年代から1980年代の半ばあたりまでは、地上波のテレビもこれくらい進行がグダグダで、笑いの数も多くありませんでした。しかし、時代を追うごとに番組のパッケージ化が進み、「グダグダ」や「バカ」よりも、「そつのなさ」や「クレバー」を求めるように変化。「パッケージ化された番組に視聴者が飽きてしまった」という事実はユーチューバーや一発屋芸人などの人気からもうかがえます。

地上波テレビ番組のスタッフたちは、「72時間ホンネテレビ」を見て自らの技術面に自信を深めるとともに、こうした本質が欠けていることに気づかされたのではないでしょうか。

「稲垣結婚」「香取トランプ」に批判が殺到も

もう1つ、「テレビ番組の本質として、これは忘れてはいけない」と再認識させられた瞬間がありました。それは、「稲垣吾郎がナンパした女性と結婚式を挙げる」「カトルド・トランプが都内に出没する」の企画が発表されたとき。すると、しばらくの間、ネット上には「やりすぎだ」「シャレにならない」「絶対にやめるべき」などの批判が殺到し、Yahoo!ニュースのコメント欄にも、「そう思う」と同調する声が圧倒的多数を占めました。

しかし、「72時間ホンネテレビ」は、こうした声に信念を曲げることなく、思い切った企画を見事にやりきり、結果的に批判を上回る称賛を集めました。地上波のテレビマンたちは、「多少の批判にめげずにやりきることの大切さ」や「批判があがるくらいのほうが見てみたくなる」のが本質であり、自分たちがなくしてしまったものを見る思いがしたのではないでしょうか。

もし「スポンサーの力が強い地上波では無理」「ウチはコンプライアンスがうるさいから」などと逃げていたら、若年層からジワジワと浸透しはじめているネットテレビの勢いに飲み込まれてしまうでしょう。

ちなみに、フィナーレの72曲生ライブと同時刻に地上派で放送された「世界の果てまでイッテQ!」(日本テレビ系)の視聴率は21.2%、大河ドラマ「おんな城主 直虎」(NHK)は同11.4%を記録。これらの高視聴率番組は、「72時間ホンネテレビ」の影響をほとんど受けなかったのです。

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