「72時間ホンネテレビ」が示した3つの本質 地上波が失ったものがそこにはあった
2つ目は、芸能界の本質。これまで「東洋経済オンライン」へのコラムで何度も書いてきたように、芸能界とテレビ界は長年の慣習と忖度(そんたく)によって成立してきました。ほかの業界にも同じような慣習や忖度はありますが、時代の流れに沿う形で減りつつあるだけに、芸能界とテレビ界の「圧力」や「自主規制」などがより目立つ形になっているのです。
しかし、「72時間ホンネテレビ」から見えてきたのは、それらの習慣や忖度を打ち破ろうとする当事者たちの思い。番組放送前は「ジャニーズ事務所への配慮から、出演タレントがいないのではないか」「大手事務所の芸能人は難しいだろう」と言われていましたが、フタを開けてみたら多くの芸能事務所が所属タレントを送り出していたのです。
これは「いつまでも業界のしがらみにとらわれていてはいけない」という意思表示であり、実際、芸能事務所やタレント本人にとってイメージアップになっていました。3人が全身から発していた「ありのままに楽しくやろうよ」というナチュラルポジティブな姿勢がゲスト出演した芸能人たちにも乗り移り、魅力的に見えていたのです。慣習や忖度にとらわれて、3人との交流があったにもかかわらず出演しなかった芸能人とのイメージギャップは計り知れないものがありました。
「72時間ホンネテレビ」によって、「長年続けてきた慣習や忖度はイメージダウンにつながる」「自分たちの都合よりも視聴者を優先させるべき」という芸能界の本質があらためて浮き彫りになったのです。
世の人々を侮り続ける芸能事務所
ただ、皮肉だったのは、72時間の中で「最も感動した」といわれているのが、SMAP時代の盟友・森且行さんと再会したシーンだったこと。友人との再会がこれほどのサプライズとなり、感動を集めてしまったのは、ひとえに「芸能界の慣習と忖度がいかに強固なものなのか」にほかなりません。その厳然たる事実が、3人の「『森くん』という言葉で(Twitterの)世界1位を取れたことがうれしい」、森さんの「(みんなに)会いたかったもん」という言葉に集約されていました。
その瞬間、ほとんどの視聴者が、ようやく慣習や忖度から抜け出し、地に足をつけて歩き始めた3人の姿を認識したとともに、「中居正広さんと木村拓哉さんがいない」という寂しい現実を再認識したでしょう。
フィナーレの「3人だけの72曲生ライブ」でSMAPやジャニーズ事務所絡みの楽曲を含まなかったことも含めて、今回の「72時間ホンネテレビ」ではここまでが限界。3人は「72時間ホンネテレビ」のテーマに、「ありのまま」だけでなく「感謝」を掲げていたように、多くの人々に迷惑をかけてまで強行突破しようとは思わなかったのでしょう。
人気商売である芸能界において、イメージは何よりも重要なはず。しかし、すでに多くの人々が知っている芸能界の慣習や忖度をやめない事務所が多いのはなぜなのか。その理由として、「多くの芸能事務所が、世の人々を侮っているから」といわれても反論できないでしょう。
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