ソフトバンク、米通信「合併交渉破談」の真相 なぜTモバイルとの合併交渉を停止したのか

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10月27日の取締役会には、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長やアリババのジャック・マー会長ら社外取締役も出席。「スプリントの経営権を手放してまでTモバイルと合併すべきではない。それが正しいものの考え方というものだ」と強弁する意見が社外取締役から出たという。

同日夜の電話では、「株の売却金額など細かい条件面ではなく、経営権という(合併の)根幹に関わることだから、『(今回の交渉は)なしにしようよ』と、ティム(・ヘッドゲスCEO)に伝えた」と孫社長は明かした。

何しろ、2013年にスプリントを買収したのは、Tモバイルとの合併ありきだった。米国の通信業界は2強2弱の構図であり、全米首位のベライゾンと2位のAT&Tが圧倒的シェアを持つ。当時業界3位で経営不振に陥っていたスプリントと当時4位のTモバイルが合併することで大手3社の寡占体制を作るというのが、孫社長の描いた青写真だった。

トランプ米大統領に頼った孫社長

孫正義社長が陣頭指揮を執り、スプリントの通信網は大きく改善した(撮影:尾形文繁)

だが、通信の規制当局である米国連邦通信委員会(FCC)が首を縦に振らず、合併構想は実らなかった。そこで孫社長はスプリント単独での再建に本腰を入れた。同氏の陣頭指揮で、大幅なコスト削減やネットワーク構築の細かい工夫を行った結果、スプリントは営業黒字化を果たす。ただこの間、Tモバイルにシェアで抜かれ、米国内で4位に転落した。

昨年11月、米大統領選挙で規制緩和に積極的とされる民間企業出身のトランプ氏が当選すると、孫社長は大統領就任直前のトランプ氏の元を訪問。「4年で米国に5兆円投資し、5万人の雇用を生む」と約束した。今年に入ってからは実際にTモバイルとの合併交渉に挑んできた。

だがTモバイルは契約数を急速に拡大しており、米通信大手4社の中で最も勢いがある。ドイツテレコムにしてみたら、伸び盛りの子会社を容易に手放すはずがない。

今やスプリントよりも上位のTモバイルのほうが、経営権を握るのが自然だ。また、業績が好調で単独でも生き残っていけるTモバイルには「急いで経営統合をする必要はなかった」(情報通信総合研究所の清水憲人主任研究員)。

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