ベンチャーで進む「仕事の断捨離」最前線 会議室も飲み会も社内メールも捨てた!
過去には、「有休取るのが申し訳ないという気遣い」をやめて、有休消化率が43%から82%に向上した。「朝礼で一からすべてを共有すること」をやめ、事前にチャットワークで情報を共有することにした結果、疑問の解消だけが朝礼の議題になって、所要時間が40分から15分に。
「求職者との20時以降や土日の面談」も思い切ってやめた。その時間帯にしか面談できない人は、結局は「平日昼」の企業の面接も受けられないことが多い。長時間勤務で疲弊する社員が減って、売り上げは増えた。専務取締役の川畑翔太郎さん(31)は、
「断捨離で大事なのは、何でも言っていい空気をつくること」
と話す。
「仕事なのにムダだなんて言ったらいけないんじゃないか」と遠慮する社員もいるが、ムダを申告しない社員には「残業時間がずいぶん多いけど、本当にムダはないの?」と繰り返し確認する。断捨離MTGは、業務が効率的でない人の働き方をチェックし合い、アドバイスする機会にもなっている。
「遅刻にならない」たったそれだけのことで
社員の遅刻は不問 働く誇りが持てた
「ママ、お仕事行かないで」
「今日もお迎え遅くなる?」
離れたくないとぐずる子どもをなだめながら、遅刻しないよう何度も時計を確認する。
後ろ髪を引かれる思いで出社した日は、仕事をしながら一日じゅう、モヤモヤが消えない。育休明けに、こんな経験をしたことのある人は多いだろう。
家事代行サービスのCaSy(カジー)では、子育て中の従業員の「遅刻扱い」をやめた。数分、ときには数十分遅れることがあっても、報告は必要ない。この制度を導入したマーケティングチームは6人中4人が子育て中の女性だ。「保育園に子どもを送ったときに……」と冒頭のような体験を語り合う雑談をきっかけに、生まれた制度だ。
顧客との約束があって時間厳守の家事代行の現場とは違い、マーケティングの仕事は、アポイントがない日なら数分から数十分遅れたとしても、業務に影響を及ぼすことはない。発案者の一人でPR担当の里田恵梨子さん(35)はいう。
「5歳の娘はわりと繊細なタイプ。前の職場で忙しくてお迎えに遅れてしまう日が続いたとき、『怖くて保育園に行きたくない』と不安定になって、母であることよりも会社の一員としてルールを守ることのほうが大事なのか、と悩んでいました」
子どもと相対するだけで大変なのに、遅刻したり休んだりすることへの申し訳なさや焦りが、ストレスを倍増させる。遅刻にならない。たったそれだけのことなのだが、目の前の子どもに、
「なんでぐずるの」
「なんで熱出すの」
などという気持ちを抱かずに済むようになったという。
遅れた分のリカバリーは、個人の裁量に任せている。