小泉進次郎氏の「こども保険」、なぜ必要か?

経団連の社長たちに「年金返上」を求めた理由

木本:もしこども保険が当たり前になったら、世の中どういうふうに変わっていきますか?

藤沢:子どもができると、自分がなんとかしなきゃと思っているお母さんが多いのです。ひとり親家庭が増えていますが、自分独りで子どもを10年20年育てることに絶望的な気持ちになっている。ひとり親家庭は貧困率も高いんです。その率はどれくらいだと思いますか。親一人子一人なら年収が173万円より低い家庭のことです。

木本:全シングルマザーの中で、20%くらい?

藤沢:いえ、50%超です。断トツで、先進国のどの国より突出しています。子育てをフォローしている北欧は10%くらいのところが多い。アメリカも4割を切っています。

木本:日本がそんなに高いとは知りませんでした。

藤沢:ひとり親世帯はいまや150万世帯近くいますから、決して珍しくありません。絶望的な気持ちで子どもを育てているから虐待の割合も高い。独りではなく、社会がちゃんとフォローしてくれるんだという気持ちに、お父さんお母さんたちになってほしいんです。

木本:うちの妹も旦那を亡くしてシングルマザーなんです。育てるためにもちろん働きますが、大した収入にはならない。

藤沢:保育所に預けても、病気になったら休まなければならないから、なかなか正社員になれないんですね。

働くお母さんの負の連鎖を断つ

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木本:働かなきゃいけない。だから子どもとコミュニケーションが取れない。兄として可能な範囲で援助して、働く時間を減らしてあげたいと思いますが、僕の仕事も不安定です。サポートのためにはもっと働かなければですが、今度は自分の家族との時間がなくなってコミュニケーションが取れない。「もっと効率よく稼げる仕事はないのか!」と、マネジャーにあたる。今度はマネジャーがストレス抱えて、家族とうまくいかなくなる(笑)。

藤沢:負の連鎖が生まれてしまうんですね。65歳になったら誰もが年金で毎月何万円も支払われるのですから、シングルマザーに払ってもおかしくないんじゃないでしょうか。

木本:僕は、身内にシングルマザーがいるので、切に願います。でも、そういう立場でなければ、優先順位が高くないですよね。

藤沢:人によってはそうなるでしょうね。それは社会で考えなければいけません。年取ってもたくさんおカネを持っている人もいます。65歳になったら年金は全員に必要なんですか? まだまだ元気に働いている人もいます。すごい資産を持っている人も年金をもらっていますよね。

小泉進次郎さんは経団連に行って訴えました。大きい会社の社長・会長なのに年金をもらっている人たちに、「皆さん、年金を返しませんか?」と。それで戻ってくる金額は大したことはなくても、彼は世の中の考え方を変えたいのです。高齢者で本当に困っている人には、必ず出すべきです。でもそうでなければ、困っているシングルマザーに出したほうがよりいいのではないでしょうか。

(構成:高杉公秀)
<後編に続く>

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