さて、株価が上昇して来た現在、日本の一般個人に資金運用の世界でセイラー式の「ナッジ」を与えるには、どうしたらいいだろうか。投資の世界では、リスクを取って株式などに投資すると、「長期なら絶対に儲かる」とは言えないので強調の加減が難しいのだが、「無理のない程度にリスクを取って投資をしてみることは“たぶん”いいことですよ」、「やってみませんか」というくらいの勧めをすることは、“おそらく”いいことだろうし、大方の常識にも反しない。
なぜ「つみたてNISA」は、損をしにくいのか
しかし、これまで、「貯蓄から投資へ」の掛け声のもとに、結局は手数料稼ぎに血道を上げて来た証券界に対して、日本の幅広い個人は直感的な不信を持っている。
個人を投資に誘い、且つなるべく間違えさせずに、願わくは小さくても成功体験をプレゼントできる、何かいい「ナッジ」の材料はないかと探してみたら、来年からスタートする「つみたてNISA」に思い至った。
つみたてNISAは、大まかには、①年間40万円までの、②積立投資を行い、③得られた利益に対して20年間課税しない(つまり最大限の非課税投資枠は800万円になる)、という制度だ。しかも金融庁が「ノーロード」(販売手数料ゼロ)で、運用管理手数料が安いなど、かなり厳しい条件を付けた商品に対象を限定したこともあって、手数料稼ぎの悪影響を受けにくく、また少額の積立で投資するので「大きく失敗しにくい」性質を持った投資体験が可能だ。筆者は、つみたてNISAは、金融庁が作った「投資教育教材」だと思っている。
課税所得のある人には確定拠出年金(個人型の愛称は「iDeCo」)の税金のメリットが大きいので、先ずはこちらから、というのが一応のセオリーではあっても、60歳以前でも引き出しが可能な分(確定拠出年金は原則として60歳以前に引き出せない)、精神的には気楽な面もあるので、月々1万円くらいからでいいので、つみたてNISAをやってみるといい。投資対象には、外国株式と国内株式のインデックス・ファンドで手数料の安い物を1本ずつ選ぶことをお勧めする。職場の仲間などと一緒にやってみるのもいい。悪くない「ナッジ」だと思うのだが、いかがだろうか。
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