もちろん、夏場までの安倍政権の支持率低下に起因する国内政治リスクは、多少は市場心理に影響していたかもしれない。だが、結果は野党や多数のメディアの攻撃に晒された安倍政権が総選挙に打って出て、政権を保った。
この事実は、安倍政権よりもしっかりとした政策を打ち出し、政権を担う能力や意志がある野党が存在しているとは思えない以上、必然だったようにみえる。国政選挙によってアベノミクス継続が国民に信任されたのはこれで5回目だが、そうした意味で、今回の総選挙はこれまでの国政選挙と同様に位置づけられると筆者は考えている。
以上の筆者の認識を踏まえると、今後日本株がさらに上昇するかどうかは、最高値更新を続ける米国株市場が大崩れせずに上昇基調を保つかが何よりも重要ということになる。
さらに、さらに、米国長期金利が今年の高値である3月の水準まで上昇して、一段とドル高円安が進めば、日本株が米国株をアウトパフォームしてもおかしくない。現在、ホワイトハウスと共和党の大物議員が提示している法人税率大幅引下げを主軸とした減税法案が、年末にかけて議会で可決され、2018年の米国経済の成長率を高めることになれば、米国の長期金利は一段と上昇する可能性がある。
安倍政権の中心的政策手段は今後も金融緩和策
一方、総選挙が終わった日本国内で来年までに想定される大きなイベントは、前回のコラムでも触れたが、日本銀行の黒田東彦総裁の後任を決定する人事である。すでに、「黒田総裁続投」の観測記事が大手メディアで増えている。このため、サプライズがあるとすれば総裁交代人事が実現したケースである。株高をもたらすとすれば現行の執行部以上に、金融緩和徹底や2%インフレ実現に強力にコミットする人物が、安倍政権によって選出される場合だろう。
安倍政権が舵取りを行う財政政策については、2019年10月に予定されている消費増税の半分程度を教育無償化の歳出にするという公約が、実際にはどんな形で実現されるかである。
増税分の半分を家計への分配などで歳出にまわすだけなら、今後も緊縮的な財政政策が続くことになる。仮に、消費増税の判断を先送りしたままで、教育無償化による歳出拡大を決めることなれば、これは国債増発を伴う拡張的な財政政策となりうる。
年末にかけて2018年度の予算策定などを通じて、安倍政権がどのオプションを使うかは現状はっきりしない。実際には財政政策を総需要安定化政策としてアグレッシブに使う可能性は低く、2013~17年同様に金融政策がインフレ安定、経済押し上げの主たる政策手段になると筆者は予想している。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら