安倍長期政権の「今後の切り札」とは何か 投資家目線で日本を見る目が変わるのは当然

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なお、安倍政権が長期政権となる中で、「日本の財政規律が緩んだ」などと語る論者がメディアで目立つ。だが、2013年以降日本の財政収支が改善し続けている現実を知らないのかもしれない。9月11日のコラム
でデータを使い説明したが、2013年以降日本における財政政策は一貫して緊縮財政が続いている、と筆者は考えている。

投資家目線で見れば、日本を見る目が変わるのは自然

ところで、10月22日の総選挙において安倍政権は国政選挙で5回目の勝利を収め、次の衆議院選挙までの最大4年程度は、安倍晋三首相による政治運営が続く可能性が高まった。

やはり前出の9月11日のコラムでも述べたが、アベノミクスにおいて成長押し上げや雇用拡大に貢献したのは「第1の矢」である金融政策だけである。金融政策がしっかりと機能することで、経済社会が落ち着き、同時に不安定だった日本の政治情勢が一転安定したのである。

2010年代に入ってから、欧州、米国、新興国など各地域で政治情勢が不安定となっているが、それらとの比較でも日本における最近の政治の安定は際立っている。2012年まで世界経済のお荷物でしかなかった日本が、脱デフレに向けて粘り強く政策運営を行い、国民の信任を掴んだ。それが長期政権を可能にして、それまで毎年代わっていた日本のリーダーが、一転精力的に外交政策を展開し、先進各国の首脳の中心的な存在となりつつある。

振り返れば、1990年代に日本の政治情勢が不安定になった経緯にはさまざまな要因があげられるが、当時から金融財政政策が機能不全に陥り、デフレとともに経済情勢が悪化したことが、政治不安定化に大きく影響した。過去30年弱の日本の経験は、金融財政政策という経済政策が、政治や社会の安定にとって、極めて重要であることを如実に示していると言えるだろう。

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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