「アイボ」はクラウドとAIで生まれ変わった 異業種コラボで応用ジャンルの拡大も

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ところで先代AIBOに関しては、ちょっとした思い出がある。アルミフレームに手足がついた試作段階のAIBOを米国の展示会で見ながら、そのプロジェクトを率いているという人物に質問したことがある。

「これだけ大がかりで高コストなシステム。いったい“どんな役に立つんでしょう?”」

今から思えば実にバカバカしい質問だ。新生aiboの発表会でもAIスピーカーと絡めて、家庭内での位置付けや役どころを尋ねる質問があったが、それ以上に無粋な質問だったと、思い出すだけで恥ずかしい。

思えばそれが土井利忠氏だったのだが、丁寧に次のように話してくれた。
「ソニーは役に立たない製品を作ってきたから、ここまで来られたんですよ。どんな役に立つかではなく、どれだけ欲しい製品か、感性に訴えるかが重要なんです」

20年ほど前のことで正確な文言は覚えていないが、“役立つ機能”ではなく“欲しくてたまらない”“手放したくない””手元に出したい”という感情こそが重要なのだという話に、思わずヒザを打ったことがあった。

この話を持ち出すと川西氏は「aiboはオーナーに可愛がってもらうロボットです。“役立つ機能”を前面には置きません。しかし一方で、せっかくオーナーや家族と近しい関係にあるのですから、役立つ面もバランスよく配合していきたいですね」と話した。

たとえば、お年寄り家庭の“見守り役”としてのaiboを川西氏は例として挙げたが、発表会でも触れられた他社連携も視野に入れれば、他社との業務提携から広がる世界も見えてくるだろう。

異業種提携で適応領域を拡大

発表会ではIoT連携を将来のプランとして挙げていたが、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems、微小電気機械システム)技術の発達などにより実に多彩なセンサーが安価に登場している昨今。ウェルネス、ヘルスケアの分野で、センサーを身体に装着して在宅医療に活用する動きも出始めている。

そうしたジャンルへの応用も考えられるのかもしれない。そう川西氏に水を向けると「ソニーだけではカバーできない分野もありますから、今、何ができるとは言えません。しかし幼児保育、教育やウェルネス、在宅医療などの協業テーマは真っ先に出てくるでしょう」と話した。

新たなビジネスプラットフォームへと成長していく可能性も感じる新生aibo。新市場、新プラットフォームの開拓は可能なのか。1月11日の発売日までの間に、追加取材をすることでその可能性を掘り下げていきたい。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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