「盲導犬への暴力」騒動で見えた現状と問題点 チョークは"虐待"にあたるのか?
「動画拡散後、A氏を特定しようという動きが活発になりました。“同じ目に遭わせる”という過激な発言や障がい者への差別的な内容も。動画が撮影された駅で張り込んでいた人もいたようです」
盲導犬と一緒では目立つためA氏が危害を受けないようにとの配慮もあったようだ。
ただ、騒動はほかの盲導犬ユーザーにも波及している。
「事件とは無関係なのに勝手に写真や動画を撮られていた人もいたそうです。見えないので撮られても気づくことはできません。外出することに怯えているユーザーがいるとも聞いてます」(塩屋代表)
盲導犬はサンドバッグではありません
犬や猫の保護などを行う社団法人RJAV被災動物ネットワークの佐藤厚子さんは、
「すべての盲導犬ユーザーが悪いわけではなく、大切にしている方はたくさんいます」
と話す。ただ一方で盲導犬の存在を負担に感じたり、暴力や虐待を行うユーザーもいるのだ。盲導犬の事情に詳しい人物は、その実態を伝える。
「多くは盲導犬を強く引っ張ったり叩く、蹴る、怒鳴るなどです。中にはガリガリにやせて適正な育成が行われていない犬や1日中、首を引っ張られていた犬もいたそうです」
前出の佐藤さんは、
「アルコール依存症のユーザーが盲導犬を棒で叩いていたと聞いたこともあります」
盲導犬への暴力を見かねた近所の人が通報し、事態が発覚したこともあったようだ。
「虐待の経緯として利用者がうっ憤やストレスをいちばん近くにいる盲導犬に八つ当たりしていたことが考えられます。盲導犬はサンドバッグではありません」(佐藤さん)
盲導犬を利用する70代の山川幸一さん(仮名)も虐待の噂を聞いたことがあった。
「指示に動かないなど、腹を立てることもありますが盲導犬も100%完璧じゃないこともわかっています。それなのに暴力をふるうならユーザーの人間性の問題です」
取材をすると、騒動は「指導の内容への誤解がある」という声もきかれた。
「盲導犬が間違ったことやしてはいけないことをしたらNOと言います。それでもダメならリードを引き合図を出す『チョーク』という方法を学びました。盲導犬はチョークされたときはいけないことだと認識し、次から指示を守るようになるんです」(山川氏)