データで見る「日本のケア労働の遅れた実態」 APECで感じた「日本の常識・世界の非常識」

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女性に対してフェアな賃金体系は、男性の若手社員にとってもフェアに感じられるはずだ。「フェアな処遇こそが人の能力を最大限引き出し、生産性を高める」と考える国々に、これ以上、後れを取らないため、日本の雇用主は「女性に優しい」「女性の活躍」といった掛け声に留まらず、本当に公平な賃金体系を作ってほしい。

会議の企画を担当したGAPメンバーと筆者(左)

ところで、国際会議が有用なのは「日本の常識・世界の非常識」と気づくデータや事例に出合うためだ。国連機関UN Womenのアジア太平洋地区ディレクター・加藤美和さんの報告では、男女の無償ケア労働(家事・育児・介護等)の時間配分について、興味深いデータが示された。家事育児等の時間は、どの国でも女性のほうが男性より長い。つまり、男女格差がない国はない。問題は「差の大きさ」である。

日本の「男女のケア労働時間格差」は大きい

加藤さんは、男女別に加えて、経済発展段階別のデータを見せてくれた。それによると、先進国における男女のケア労働時間格差は、およそ2倍。つまり、女性は男性の倍の時間、家事育児介護をしている。一方、途上国ではその差が5倍、6倍に上っている。そして日本における男女の家事育児時間格差は、統計により異なるが、3~5倍に上る。

つまり日本は、国全体の経済水準は先進国だが、家庭内の仕事分担を見ると、日本は男女格差が大きく、先進国並みになっていない。先に示した、マッキンゼー報告書の内容に照らせば、もっと男性が家庭責任を果たせるようになれば、女性の社会進出が促進され、日本全体の経済発展につながるといえそうだ。日本国内だけを見ていると「男性は長時間労働だから家事ができなくても仕方ない」とあきらめてしまいがちだが、ほかの国と比較することで、もっと差を縮めることができるのではないか、という視点が生まれる。

もう1度、おさらいする。①男女平等は経済成長のエンジン、②職場においては年齢・性別・職場滞在時間ではなく成果に基づくフェアな賃金を支払い、③家庭においては男性の家事育児分担を進め、男女ギャップを縮める――。

やるべきことは、シンプルではっきりしている。そして、④男性リーダーが本気を出せば、3年で結果が出るはずだ。3年後の2020年、日本はどうなっているだろう。

治部 れんげ ジャーナリスト

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じぶ れんげ / Renge Jibu

東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授。日経BP社、ミシガン大学フルブライト客員研究員などを経て2021年4月より現職。内閣府男女共同参画計画実行・監視専門調査会委員、日本ユネスコ国内委員会委員、日本メディア学会ジェンダー研究部会長、など。一橋大学法学部卒、同大学経営学修士課程修了。著書に『稼ぐ妻 育てる夫』(勁草書房)、『炎上しない企業情報発信』(日本経済新聞出版社)、『「男女格差後進国」の衝撃』(小学館)、『ジェンダーで見るヒットドラマ―韓国、日本、アメリカ、欧州』(光文社)、『きめつけないで! 「女らしさ」「男らしさ」』1~3巻(汐文社)等。

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