データで見る「日本のケア労働の遅れた実態」

APECで感じた「日本の常識・世界の非常識」

3年間でここまで増えた背景には、首相の閣僚指名において意識的に女性を増やしたことなどがある。つまり、数年で目に見える成果が表れた国・地域では、男性リーダーが実行力を持って女性リーダーを抜擢したり、証券取引所が主導して企業にプレッシャーをかけたりするなど、大胆な施策を取り入れている

UN Women加藤さん(右)と筆者(左)

ひるがえって、日本はどうか。確かに安倍晋三首相は「女性が輝く社会」について、国内外の演説で頻繁に発言している。昨年4月には女性活躍推進法が施行され、企業など雇用主は女性管理職を増やそうと努力している。ただ、3年、5年という単位で見たとき、数値ではっきりわかる成果が出ているとはいえない。社会や組織として急な変化がもたらす混乱を避けたい気持ちはわかるが、ほかの国と数値で比較したとき、「日本は変化していない」「変化が遅い」感は否めない。

各国・地域からの報告では、女性リーダーが増えることによる経済メリットが、明確に関連づけられていた。たとえば、複数の人が引用したマッキンゼーによる調査”The Power of Parity: How advancing women’s equality can add $12 trillion to global growth”。2015年に発行され、168ページに及ぶ報告書には、男女平等を進めることが、世界経済の成長に大きなインパクトを与えると書かれている。その金額は莫大で、12兆ドルに達するという。

裏を返せば、男女不平等を放置することは、これだけの機会損失をもたらすことになる。報告書は、初等教育や妊産婦の死亡率など主に途上国で問題になる男女の格差に加え、先進国でも課題となっている政治参加の男女格差、同じ価値の仕事につく男女の賃金格差(男女格差解消による経済効果は、絶大である)にも言及している。

男女平等の実現は女性だけではなく、社会全体にメリットがある――。こうした発想は、ビジネスリーダーにも浸透してきた。アメリカの非営利組織カタリスト協会は、多くの企業に女性活用に関するコンサルティングを行う。カタリストで米国北東部の地域担当ディレクターを務めるリタ・チハブラさんは次のように話す。「アメリカでは、女性の賃金は男性の80%に留まる。男性と同じ金額を稼ぐため、女性は1年に44日も余計に働かなくてはいけない」。

賃金格差に切り込む日本企業はまだ少ない

カタリストはダイバーシティ推進で優れた取り組みをした企業を毎年表彰している。そして昨年の表彰企業は、従業員の賃金分析を通じて能力・成果以外の要素で不当な格差が生じていないか調査したという。

日本でも多くの企業が、女性社員向けのモチベ―ション・アップ・セミナー、育児支援策の拡充は行っている。一方で女性の意欲を阻む最大の要因である、賃金格差に切り込む企業はまだ少ない。そもそも、女性だけでなく、若手社員は、中高年に比べて賃金が低くても「当たり前」と思われているのではないか。

能力や成果以外で賃金が決まる制度の下で、女性だけでなく若手も不公平感を抱き、十分に能力発揮できない。こういう話は、取材を通じて筆者も数えきれないほど聞いてきた。本当に女性の活躍が必要なら、年齢や性別、会社にいる時間ではなく、成果に応じたフェアな報酬が払われるべきだ。

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