やはりトランプは強運の持ち主かもしれない ハリウッドスキャンダルを「深読み」してみた

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北朝鮮情勢の緊迫化という現実のなかで、コーカー議員の発言は、そのプリベンティブウオーの引き金になりかねない。バノン氏のコーカー議員発言に対する反論は、コーカー議員にとっては意外だろうが、米国社会の情動的な現状を極めて的確にとらえていて、米議会やメディアに冷静さを取り戻させるきっかけになりうる。バノン氏の感情に流されない論調には、トランプ大統領も同調しているのではないか。

ハリウッドスキャンダルはアマゾンに飛び火

3つ目のトランプ氏の政敵中の政敵に飛び火したスキャンダルとは何か。アマゾン・ドット・コムの映画製作子会社のアマゾン・スタジオのトップ、ロイ・プライス氏が、セクハラ行為の疑いで休職扱いとなり、その後、辞職することになった。

プライス氏処分の理由は2つある。1つは、プライス氏の女性プロデューサーに対するセクハラ行為、もう1つは、女優のローズ・マッゴーワン氏が、ハリウッドスキャンダルの張本人ワインスタイン氏による性的被害を訴えたにもかかわらず、プライス氏や親会社のトップに無視されたというのだ。

親会社アマゾンの最高経営責任者(CEO)は、言わずと知れたジェフ・ベゾス氏だ。同氏は、世界一の大金持ちと報じられ、同時に、トランプ大統領に批判的な論調で鳴らすワシントンポスト紙のオーナーでもある。トランプ氏にとっては、政敵中の政敵といっていい。

セクハラ、レイプなど性的被害について、米国のビジネス社会では、CEOは「オープン・ドア・ポリシー」(ドアをつねに開けておく政策)を貫くことが常識となっている。つまり、性的被害が起こったときには、即座に対応しなければならない。

そのビジネス界の常識となっている、あるべき企業としてのコンプライアンスを、アマゾン・グループは十分に守らなかったのではないかということが、今後、議論される可能性が出てきた。これはトランプ氏の政敵中の政敵であるベゾス氏にとっては、大きな失点となる。

大きな失点といえば、実は、バラク・オバマ前大統領やヒラリー・クリントン氏にとっても痛手は大きい。なにしろワインスタイン氏は、オバマ氏やヒラリー氏にとって、抜群に有力なスポンサー兼プロモーターであったからだ。

今回のハリウッドスキャンダルは、トランプ氏にとって「最大のライバル」であるオバマ氏には将来的にも長引く可能性のある逆風となったが、トランプ氏にとっては追い風になったことは間違いない。

湯浅 卓 米国弁護士

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ゆあさ たかし / Takashi Yuasa

米国弁護士(ニューヨーク州、ワシントンD.C.)の資格を持つ。東大法学部卒業後、UCLA、コロンビア、ハーバードの各ロースクールに学ぶ。ロックフェラーセンターの三菱地所への売却案件(1989年)では、ロックフェラーグループのアドバイザーの中軸として活躍した。映画評論家、学術分野での寄付普及などでも活躍。桃山学院大学客員教授。

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