1日1億円を売った実演販売士の傾向と対策 達人の口上は確固たる理論で成り立っている
――「いい商品」に出会うための動き方がある。
松下氏:これは若手の実演販売士にもよく言っていることなのですが、一発目から「いい商品」に出会おうとしても、うまくはいきません。「売れる」こと、例えば野球で言えばヒットやホームランは正直、誰でもやっていれば打てる時が来ると思います。けれど「売れ続ける」ためには、やはり何か一つを極めなければいけません。ぼくの場合はピーラー(皮むき器)が最初に取り扱った商品でしたが、まずは日本中の皮むき器に精通することから始めました。
もちろん出会った商品がすぐに売れる商品になることはほとんどありません。多くは「売れない」ところから始まるのですが、売れなかった商品も別の機会で役に立つ時がやってくる。その積み重ねが「売れる結果」に辿り着く。それが実演販売の世界です。この仕事ほど、ムダのない仕事はないんじゃないかっていうぐらい、ひとつひとつの行動が、本当にいろいろな結果に繋がっていきます。そういう行動があって、はじめて「売れ続ける」ことができると思うんです。
と、偉そうなことを言っていますが、自分自身、この実演販売士という仕事の本当の魅力や面白さを感じられるようになるまで、長い年月を要しました。今でも新しい発見の連続です。ここに至るまで、鳴かず飛ばずの時期も長らくありましたし、「壁」にぶつかることも一度や二度ではありませんでした。ただ、それでもこの仕事を辞めずに続けられたのは、自分らしくあることを大切にしてきたからだと思っています。人それぞれいろいろな「壁」の克服方法があると思いますが、ぼくの場合、それは昔から「自分に無理強いしない」ことで、乗越えてきたんです。
コンプレックスだらけ。人目を気にする“お調子者”
松下氏:覚えている最初の「壁」との対峙は、小学校から中学校に上がるくらいの頃でした。ぼくは横浜の生まれなのですが、小さい頃からサッカー選手を目指していて、中学に上がる段階で、学校の部活ではなく、地域の強い選手が集まるクラブチームに入ろうとしていたんです。
ところが、いざ仮入部で覗いてみると、近所でそれなりに強かった自分を遥かに上回る強い選手がいるわけです。それも一人や二人ではなく大勢。上には上がいる、これでもかというほど高い「壁」を目の前にして、自分は早々に逃げ出すことを決めました(笑)。確か、入学してすぐ、4月中のことだったと思います。