21歳地下アイドルが悟った仕事観と対人関係 「自分とは合わない人」を断って見えてきた

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チャートにランクインすることも、音楽媒体に取り上げられることも光栄でしたが、それによって、この音源を受け入れてくれた人たちの存在を知られたことが、私にとっては何よりもうれしい出来事でした。

地下アイドルとして、この世界でのあり方に迷っていた私にとってそれは、ほとんど救われるような思いでした。

こうして自分の趣味嗜好や想いを尊重した地下アイドル活動は、私をどんどん自分に合った面白い世界へと導いていってくれたのです。

居心地のよい「磁場」を作る

私が自分の居場所を見つけられたのには、もう1つ大きな理由があります。

以前は、少し苦手だなと思うような高圧的な人や、下心が見え隠れするような人からの仕事もすべて引き受けていたので、仕事が精神的な負担になっていました。そして1つでも気になって仕方のない憂鬱な仕事があると、ほかの仕事にも影響が及んでしまっていたのです。

そこで私は自分に合った活動を模索しながら、私が居心地のよい「磁場」を作るようにしました。「磁場」とは、自分にとって気の合う人同士が集まってくる、居心地のよい人間関係のことです。

私の場合、本当に精神的な負担になっている一部の人との関係を絶って、ほかの人はすべて受け入れるのが磁場を形成する方法でした。

精神的な負担になっている人は、「この人ここがなければいい人なのになあ」と思った時点で負担になっていると判断して、距離を置くようにしています。私はどちらかというと人を嫌いにならないほうなので、こう考えてしまった時点で、結構な負担になっていることに気がついたからです。

以前は断り切れなかった仕事でも、後から面白い仕事につながるかもしれないと前向きに考えていましたが、不思議なもので、面白くない仕事は面白い仕事にはまったくつながらないのだと、次第にわかるようになりました。

押し寄せる不安に駆られる形で地下アイドル活動を続けていた頃には気づきませんでしたが、「自分とは合わないな」と思う人からの仕事と人間関係を断つことは、私にとって、とても大切なことでした。

以前はそうすると困ったことが起こるのではないかと恐れていましたが、やってみるとそれは、まったく問題のないことでした。困ったことなどまったく起こらなかったのです。

それと同じことですが、地下アイドル活動をするうえで、「自分の趣味ではないけれど、ファンの人はこういうものが好きそう」と勝手に予想を立ててライブをしたり、作品を発表したりしても、結局、真の需要や彼らの嗜好からは少し外れたものしか生み出せないことにも気がつきました。

そうして無理をしたキャラクター作りをしている地下アイドルの女の子たちは、その多くがすごく疲れているように見えます。私もまったくそうでした。

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