FX倍率を10倍へ引き下げると何が起きるのか 証拠金取引倍率引き下げの影響は大きい

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しかし、レバレッジ10倍規制は、東京時間の取引高約20%を占める個人投資家を減少させ、東京時間の取引高が再び減少してしまうおそれがあり、ひいては、FXが金融商品として成り立たなくなる可能性があると言ったら、それは大げさだろうか。

個人投資家は、どう対処すればいいのか?

上田氏はこう続ける。「レバレッジが高ければ、損失が膨らむのも早い。だからこそ、個人投資家が損失を少額で抑えようとすれば、素早い損切りが不可欠だった。逆にレバレッジが低いと、損失が増えるスピードが遅くなるため、心理的に損切りに踏み切れなくなる。その結果、限界ギリギリまで損失を抱えて、持ちこたえられなくなったところで損切りをする個人投資家が増えることになるだろう」。

もちろん、レバレッジは高ければいいというものではない。だが、それなりにレバレッジが高いから、証拠金も少なく、傷が浅く済んでいたが、レバレッジが低くなれば、証拠金を増額し、しかも損を持てるところまで持ってしまうために、傷は深くなってしまう可能性もある。

そう、レバレッジ規制だけでは、必ずしも個人投資家を保護できないのだ。

加えて、10倍規制だけを導入するのであれば、相対的に高レバレッジで取引できる海外のFX会社に、個人投資家が流れる可能性もある。もちろん、海外にも健全なFX会社はあるが、特にバイナリー取引などで、預けた証拠金が戻ってこないという事例もあり、レバレッジを規制することで、個人投資家がより危険にさらされる選択をしてしまうことも考えられる。

「レバレッジ10倍規制」は、まだ正式に決定したわけではない。一部で報道されただけだ。だが、関係者によれば、近々FX会社に対して金融庁による説明会が開催される予定ともいわれ、全貌が見えてくる可能性もある。

しかし、うがった見方をすれば、説明会が開催されるということは、レバレッジの数値がいくつになるかはさておき、「規制が行われること」自体はすでに規定路線である可能性がある。足元で、動きの激しい仮想通貨に資金を奪われているFX業界にとっては、今回の規制議論がどんな影響を与えるのかを冷静に分析する必要がある。また、個人投資家一人ひとりも、場合によっては、あらかじめ証拠金を増やしておくなどの備えが必要になりそうだ。

内田 まさみ フリーアナウンサー、ライター

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うちだ まさみ / Masami Uchida

1998年ラジオNIKKEIに入社し、「経済情報ネットワーク」「東京株式実況中継」などの番組を担当。フリー転身後は、アナウンサー業に加え、 雑誌や新聞などでの執筆活動や、ディレクターとして番組や音声コンテンツの制作も手がける。 著書に『FX 億トレ!7人の勝ち組トレーダーが考え方と手法を大公開』。

 

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