たとえば、魔女のほうきは、原材料である棕櫚(しゅろ:たわしなどを作る木)の皮を“新月の夜に採りに行く”といういにしえの習わしに従って、実際に採りに行っている。
石にルーン文字が書かれたルーンストーンの原材料は那智の黒石を使っている。理由は、ルーン文字を見つけたのはオーディン(北欧神話の神様)。オーディンに知恵を与えたのは、フギンとムニンという名の2羽のカラスだと伝えられている。日本でカラスといえば、八咫烏(やたがらす:日本神話に出てくる3本足のカラス)だ。その八咫烏ゆかりの熊野の那智の黒石を使って、日本版のルーンストーンを作っている。
「本当に新月の夜に採りに行ったか証明はできないですし、八咫烏の話も言わばこじつけなんですが、ストーリーを聞いて“なんだかすごい、効きそうだ”と思ってくれたら成功なんですね。その時点で魔法にかかっているわけです」
魔女の店に来る人の多くは悩みを抱えていて、相談を受ける場合が多い。客は、男3:女7の割合で女性が多い。女性の相談は恋愛絡みが多く、その中でも不倫についての話が圧倒的に多いという。愛人から正妻に昇格したいと願う女性が、ほかに相談する場所もなく、魔女のお店にやってくるのだ。
屁理屈を駆使することが魔女の仕事
「相談を受けたら『おそらく正妻になるのは無理ですよ』とハッキリ言います。そのうえで、理想に近づけるところから始めましょうとアドバイスします。
ただ相手を呪うとかそういうネガティブなことはしてもらいたくないですから、なるべく誰も傷つかず幸せになる方法を考えます。
たとえば『意中の男性の奥さんがモテるようになったら、奥さんに愛人ができて、奥さんのほうから男性を振るかもしれません。だから奥さんがモテるよう、きれいになることを祈りましょう』と勧めるわけです。女の人は、最大のライバルである女性がきれいになることを祈るわけですから、表面上は平和ですよね。もちろん屁理屈ですが。
ウィッチの語源はウィッカ。“曲げる”という意味なんです。屁理屈を駆使することが魔女の仕事だと思ってます」
そんな不思議なお店「銀孔雀」だが、店に直接足を運んでもらうことを重視したいので、グッズの通信販売はしていない。
収支は、ギリギリ赤字ではないくらいだという。ただ他店舗の収入もあるので、この店舗の収入が低くてもあまり気にしないでいいのが多店舗経営の利点だ。
B・カシワギさんにとってこのお店は最後のお店というワケではない。次は、ギャラリーを作ろうともくろんでいるという。
今のギャラリーでは展示させてもらえない作品たちを、展示できる場所になればいいなと思っている。
B・カシワギさんはつねに流動的で思いつきで行動しているように見えるが、その裏で成功するための計画やアイデアをしっかり考えている。そして協力してくれる人脈をつくる才にも長けていると思った。
次に作るお店は、どんなお店になるのか今から楽しみである。
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