38歳、大阪で「魔女を名乗る男」の非凡な人生 ライブハウスなど運営する実業家の商才

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そして、魔女のイベントを開催しつつ、1年間を通して魔女について学んだ。そしてB・カシワギさん自身が魔女になった。魔女は英語でウィッチ。そもそも男女の区別のない言葉だが、日本語訳では魔女以外の言葉がないので、男でも魔女と呼ばれる。

「魔女について学んでいちばん魅力的だっと思ったのは『魔女は自分で儀式を作れる』という部分でした。日本の儀式(葬式、結婚式など)は形骸化しすぎていて、機能していない部分があるなと前々から思っていました」

「紫蛍」が潰れたのはゲイカップルのケンカが原因だったが、ゲイのカップルは長年付き合っていても簡単に別れる人たちが多いなと感じていた。その一因には、結婚という儀式がないからかもしれないと思った。

また、B・カシワギさんの恋人の飼っていたフェレットが死んだ際、問い合わせると生ゴミに出すしかないと言われた。死んだからゴミだと割り切れる人間は少ないだろう。

「なぜ効くかわからないが効く」のが魔法

もし、儀式そのものを作り出せるのだとするなら、当人たちが救われる儀式を作れるかもしれないと思った。そこで魔女のお店が作れないか考えた。

魔女は杖やほうきなど、さまざまな道具を使うが、赤狼で手に入る骨や皮は魔女の道具にふさわしいと聞いた。魔女のグッズを販売するお店が作れるのではないかとひらめいた。

「マンションの1室で魔女の道具を売るショップを作ろうかな、と思ったんです。僕の書斎も兼ねる形で。でも師匠(魔女の女性)と話しているうちにもっと大きい店にしようってなりまして、今の店舗になりました」

店内ではさまざまな商品を売っているが、実際にB・カシワギさんが素材を集めてきて、作っているグッズが多いという。

「どうしても、魔法=オカルト=インチキ と思ってしまうと思いますが、オカルトは科学と真逆な存在ではないんですよね。基本的には一緒なのですが、オカルトには隠れていて見えない部分があるんです」

つまり「なぜ効くのか説明があり、確かに効く」のが科学ならば、「なぜ効くかわからないが効く」のが魔法というわけだ。魔法のキットは潜在意識に訴えるような仕掛けがあるものが多い。

たとえば、嫌なことを忘れる忘却キットは、忘れたい思いを紙に書き、その紙を川に流すというキットだ。

人は、いったんメモを取るとそれまでの経験から無意識的に「メモを取ったから忘れてもいいんだ」と思い、書いた内容を忘れる傾向があるという。その習性を利用した道具だ。

意中の人と仲を深めたいキットもある。相手と自分に見立てた2本のろうそくを、ろうで固めて1本のろうそくにして燃やし尽くす、という儀式をする。なんともオカルトな雰囲気だが、この儀式で肝心なのは手間暇がかかるという点だ。

つまり普段なら「なんでメールしてくれないんだ!!」なんて意中の相手に電話やメールをしてしまう時間に、儀式をしているので、嫌われないという理屈だ。

「すべての道具にそういう“理屈”が込められてます。魔法の道具は機能よりも、道具が持っているストーリーのほうがより大事なんです。重厚なストーリーがあると、それを手にする人は『なんかすごいモノな気がする』と思うわけで、そのスペシャル感を感じることこそが肝なんです」

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