ADKが世界最大の広告会社と手を切った理由

20年の提携に終止符、ベイン傘下で構造改革

そこで、ADKは数年前からWPPとの提携解消を念頭に、ベインとの交渉を重ねてきた。会社側は「ビジネススタイルや考え方の違いがあり、両社にとって利益のある形を作れなかった」「中長期的な経営戦略について考え方の違いが顕在化していた」「保有するWPPの株式の価値は過大で、それに起因する低い資本効率が問題だった」などと説明する。

ベインをパートナーとした理由については「日本で長期の投資やコンサルティングの実績があり、広告やマーケティングにも知見がある。数年かけて話をする中で、当社の戦略を理解してもらえるパートナーだと判断した」(会社側)とする。同業ではないが、マーケティング調査大手のマクロミルは2014年にベイン傘下に入って経営改革を進め、2017年に再上場した。こうした例も判断材料になっている。

一方、外部から見れば不可思議な事象もあった。それが、2011年から続いた異常な配当だ。ADKは配当政策として「1株当たり年間配当金の下限を20円として安定性を図りながらも、自己株取得を含む年間総還元性向の目安を当期純利益の50%に設定する」としている。

だが、2012年は特別配当141円を実施し、配当性向は303.3%。2014年に至っては特別配当526円を実施し、配当性向は実に685.8%。稼いだ純利益以上の配当が続いている。

会社側はROE(自己資本利益率)を最重要指標と位置づけ、ROE向上を理由に高配当を実行してきた。だが、実際にはWPPをはじめとする外国人株主(6割超)から強い要請があったと考えるのが普通だろう。記事冒頭の「搾り取られている」という競合幹部の発言はこれを示したものだ。

すでに、ADKの財務は超高額配当を続けるのが難しい状況となっている。こうした点もあり、提携解消の動きが進んだ可能性もありそうだ。

働き方改革も課題、攻めの手を打てるか

昨年、米データマーケティング会社「マークル」を買収した電通だが、国内でも今年7月に楽天と提携するなど、積極策を打ち出している(記者撮影)

ADKが構造改革を急ぐのは、広告業界が激変しているからだ。最も規模の大きい地上波テレビ広告費は2016年に1.8兆円(電通調べ)。改善基調だが、いまだにリーマンショック以前の水準に戻っていない。

一方、ネット広告は順調に伸び、2016年は1.3兆円。「2020年をメドにネット広告がテレビ広告を抜く」(民放首脳)などと予想する声も多い。ネット広告を軸にした体制を取れなければ、長期的に広告主は離れていく。

電通は海外に成長の軸足を置き、毎年数百億円規模でネット広告企業やデータマーケティング会社などの買収を進める。国内でも7月にEC大手の楽天と提携し、楽天のデータを生かしたサービスを提供する構えだ。

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