子供を欲しがる友人に共感できない深刻理由 愛された記憶が無いから愛せる自信がない

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ここからは私のこの作品に対する感想を話したいと思います。もう一度いいます、本当に苦しかった。ここまで心に刺さった作品は久々でした、なぜなら毎日泣いて暮らした幼少期を思い返したからです。

母の自殺行動に対して主人公が抱いた、2つの感情

・私は母に捨てられた

・私が逃げたから母は死んだ

話の冒頭で「私には、12歳のとき、一度私を捨てた母がいます。」と言いました。

2歳の時に両親が離婚、母子家庭になるも母は夜の仕事を始めたため、私はほとんど祖母と一緒に暮らしていました。祖母も離婚していたので、同じマンションの3階に私と祖母、6階に母ひとり暮らし。というなんとも奇妙な家庭を中学まで続けていたのですが、母も女。若かったので彼氏を作っては揉め、酔っ払っては迷惑をかけ…DVやら不倫やら本当に色々ありました。

特にお酒がひどかった。ある晩、酔っていて話の通じない母に苛立ち、手を上げた当時の彼氏を前にして、とっさに身体が反応し、私が代わりに殴られたこともあります。人生初、男の拳。超痛い。じわ…と溢れる涙。口に広がる鉄の味。なんとかその場を乗り切るも、翌日母は何も覚えていなくて、ただ顔は青あざだらけで。

お酒って、本当にクソだ。と心底思いました。彼氏に娘が殴られようが、自分が殴られようが覚えちゃいない。記憶はあるのかもしれないけど、なぜ?いつ?までの詳細がわからないから、同じことを何度も繰り返す。

けれど状況は悪化していく一方で、生活もうまく立ち行かなくなってきて、母が取った行動は………失踪。

家に行くと机の上には「ママらしいこと、してあげられなくてごめんね。」という手紙と、カミソリと血痕。捨てられた、と思いました。なんやねん、と。本当にクソだ。そのとおりだ。と。

でも泣きながら必死で警察に駆け込んで、どうにか見つけて、「二度とこんなことしないで」と抱きついてわんわん泣いた日を思い出しました。

そしてなぜか、自分を責めるのです。母を助けてあげられなかった自分が悪いんだ、と。

『酔うと化け物になる父がつらい』の状況とは違うかもしれませんが、「死ぬ」=「捨てられる」という考えに行き着くことに共感して、一話が終わる頃にはすでにもう私は泣いていました。なんでなんだろう、自分でもわからないんですけどね。

お酒は人を狂わせるときもあるんです。本人も、周りもすべて。なのにそんな状況(作品で言う母の死や、私の経験で言う母の自殺未遂・自分も娘も殴られる)になっても、お酒を飲む本人は、やめない。変わらない。変われない。

その現実を受け入れるしかない状況が、本当に切実に描かれているからこそ、わたしにとっては目が離せない作品でした。

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