ニトリが沈むアパレルにあえて参入する意味 既存のアパレルは今後異業種に席巻される?
「なぜこのタイミングで?」。最近相次いで発表されたニトリのアパレル参入やライザップのアパレル事業強化に対して、こういった疑問を抱いた方は多いのではないでしょうか。
2016年1~8月期におけるアパレル関連企業の倒産件数は205件で、前年同期に比べて6.8%増(帝国データバンク調査)。 2008年に9兆8280億円だったアパレルの市場規模は、2018年には9兆0540億円への下落が予想されているように(矢野経済研究所推計)、マーケットは緩やかに縮小しています。
そんな中での今回の動きは、一見合理的ではないように見えます。ただ、私は彼らに確かな勝算があるように見えるのです。
アパレル業界の縮小は「売り手優先」の構造にあり
アパレル業界のマーケットが縮小している背景には、経済自体が上向いていないという理由もありますが、問題はそこだけではありません。これまでのアパレル業界は、端的に言ってしまえば売り手都合。利益を出すために原価を下げたり、デザイン性だけを追い求めたり、売れ筋商品に製造を集中させたりと、顧客に対して一方的なコミュニケーションを図っていました。
それでも、顧客がモノ自体を追い求めていた時代はなんとかビジネスが成り立っていましたが、すでにその時代は過ぎてしまいました。
今求められているのは、モノを通して得られる体験。今、顧客から高い支持を得ている企業は、「ワクワクする体験を提供している」という点で共通しているのです。たとえば、国内に 7万店も喫茶店があるにもかかわらず、多くの人たちが日々絶え間なく訪れているスターバックス。なぜ皆こぞってスタバに行くのかを推測してみると、ここで美味しいコーヒーが飲めるというよりも、スターバックスの空間を楽しみたい、スターバックスで仕事をしている自分が好き、おしゃれだという、体験を目的とした動機のほうが上回っているように思います。
書店が次々と閉鎖していく中で蔦屋書店が流行っているのも、Book&Cafe形式でドリンクを飲みながら、いろいろな本をゆっくりと立ち読みできるという、これまでにない体験を味わえるから。また、廉価なトースターしか販売されていない中で、2万円を超えるバルミューダのトースターがヒットしているのも、美味しいパンで“毎朝の食卓を彩れる”という体験に顧客が魅力を感じているからです。
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