バッハの名曲『ゴールドベルク変奏曲』についても触れておきたい。アリアと30の変奏曲から成り立つこの作品が出版されたのは1741年9月。ザクセン選帝侯宮廷に滞在していたロシア大使カイザーリンク伯爵から“眠れない夜に聴くための音楽”を所望されたのが、バッハが作曲するきっかけになったと伝えられている。
そのときに演奏を行ったのがバッハの弟子のヨハン・ゴットリープ・ゴールドベルクであったことから『ゴールドベルク変奏曲』の名で呼ばれるようになったというのが名前の由来。そしてこの名曲をバッハの死後初めて弾いたのが、かのフランツ・リストだったというのも興味深い。
本来はチェンバロのために書かれた作品ながら、グールド盤の登場以降ピアノで演奏されることが圧倒的に多くなったほか、金管五重奏や弦楽アンサンブルなどにも編曲されて演奏される超人気曲となったことも、グールドの影響なしには考えられない。
すでに死をも超越
グールドが亡くなってからすでに35年の歳月が過ぎようとしている。しかしその人気は衰えるどころか、新たなファンを生み出しながらさらなる広がりを見せる勢いだ。録音の中に生きることを決断したグールドの存在は、すでに死をも超越してしまっているのだろうか。『ゴールドベルク変奏曲 コンプリート・レコーディング・セッションズ1955』にはまさしく生身のグールドが感じられる。
この素敵なセットの気になるお値段はオープン価格。ちなみに筆者は9998円のネット販売でゲットした。なお、今回の発売を記念して、アルバムの日本語解説を執筆された宮澤淳一氏によるトーク&視聴イベント『目で耳で楽しむ『グレン・グールド ゴールドベルク変奏曲1955』が10月8日(日)に東京・渋谷で開催される。
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