国連、北朝鮮制裁決議案を全会一致で採択 原油輸出制限など原案よりも緩めた内容に

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 9月11日、国連安全保障理事会は、6回目の核実験を強行した北朝鮮に対する追加制裁決議案を全会一致で採択した。写真は中国の劉結一国連大使。国連本部で撮影(2017年 ロイター/Stephanie Keith)

[国連 11日 ロイター] - 国連安全保障理事会は11日、6回目の核実験を強行した北朝鮮に対する追加制裁決議案を全会一致で採択した。北朝鮮による繊維輸出の禁止や北朝鮮への原油輸出制限などを盛り込んだ。

米国は当初、北朝鮮への原油・石油製品の全面禁輸のほか、金正恩朝鮮労働党委員長に対する資産凍結と渡航禁止を含むより厳しい決議案をまとめていたが、中国とロシアの支持を得るため原案よりも内容を緩めた。

この日採択された決議では、北朝鮮への原油と石油精製品の輸出を制限し、原油は現行輸出量を上限に、石油精製品は年間200万バレルを上限とした。また、北朝鮮へのコンデンセートと天然ガス液の輸出を禁止した。原油の大半は中国が供給している。

安保理の協議に詳しい米当局者によると、北朝鮮は年間約400万バレルの原油と約450万バレルの石油精製品を輸入している。

決議は北朝鮮による繊維製品の輸出も禁止。大韓貿易投資振興公社によると、北朝鮮の昨年の繊維輸出額は7億5200万ドルで、石炭などの資源輸出に次いで2番目に大きい。そのうち8割近くが中国向けだった。

決議はまた、国連加盟国に対し、公海上の貨物船が禁輸対象の貨物を輸送していると疑う正当な根拠がある場合に、船舶が所属している国の同意を得て検査するよう求めた。

北朝鮮の弾道ミサイル・核開発に対して国連安保理が制裁決議案を全会一致で採択するのは、2006年以降9回目となった。

米国のヘイリー国連大使は採択後、「われわれは制裁強化を喜んでいるわけではない。戦争も望まない」と強調。北朝鮮は「後戻りできない点をまだ越えていない」との認識を示した。

「北朝鮮は核開発の停止に同意すれば未来を取り戻すことができる」と述べた。

ロシアのネベンジャ国連大使は、「核実験への断固たる対応を見送ることは誤り」であるため決議案に賛成したと説明。

そのうえで、北朝鮮との対話再開には北朝鮮の核・弾道ミサイル実験と米韓合同軍事演習を同時に停止する必要があるとの従来の中国・ロシアの主張を繰り返し、「ロシアと中国のイニシアティブを過小評価するのは大きな誤り」と述べた。

決議には新たに、「包括的解決の可能性を推進するため、緊張緩和に向けたさらなる取り組み」の必要性を訴える文言が盛り込まれた。

中国の劉結一国連大使は、「すぐにでも」対話を再開すべきと指摘。北朝鮮に対し、核兵器や弾道ミサイルの開発中止を求める「国際社会の決意と期待を真摯(しんし)に受け止める」よう呼びかけた。

安倍晋三首相は「これまでにない高いレベルの圧力をかけ、北朝鮮の政策を変えさせることが大切だ」と述べた。

外交筋によると、決議案採択に向けた交渉でロシアは、北朝鮮が核・ミサイル実験を継続した場合、国連安保理が影響力を行使する手段が残されているかどうかに疑問を呈したという。

ヘイリー国連大使は新たな決議は「北朝鮮が兵器開発を推進し、資金を調達する能力」に打撃を与える狙いがあると説明。また、「北朝鮮が海外に送っている国民9万3000人の労働や重い課税を通じて資金を獲得することをやめさせる。この禁止によって、年間収入が追加で5億ドル以上減少することになる」とした。

北朝鮮は11日、米国が国連安保理で決議案の採択を強行した場合、「米国に相応の代価を支払わせる」とけん制している。

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