ほかの先進国との対比で日本が「院卒不足」であることが示される一方、日本は逆に「オーバーエデュケーション(過剰教育)」であるという指摘もある。OECD(経済協力開発機構)の「国際成人力調査(PIAAC)」によると、日本人の31.1%が「仕事に必要な学歴や能力・資格より、自分の学歴や能力・資格のほうが高い(over-qualification)」と答えた。調査国の中で日本は僅差でフランスに次ぐ2位であり、多くの人が過剰教育だと感じている。
玄田有史編『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』では生産性や賃金が伸びにくい理由の一つに「企業内OJT(On-the-Job Training)の衰退」が挙げられている。生産性向上に必要なのは、高等教育ではなく、実際に企業で使えるスキルであるという見方もあるだろう。
少子化が進む中での大学改革の方向性など、高等教育のあり方については多くの論点がある。しかし、当リポートで議論した2つの論点である「院卒不足」と「オーバーエデュケーション」というジレンマに対する解決策は、高等教育の無償化ではないだろう。
無償化というわかりやすい議論に終始するのではなく、少子化の問題点を中心に幅広く問題をとらえるべきである。
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