夫が妻の通帳を勝手に管理、犯罪に当たるか 夫婦間で窃盗や詐欺が成立する場合とは

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Kさんの夫は、実際に刑罰を受けるのだろうか。

夫が刑罰を受ける可能性は?

「まず、クレジットカードを無断で持ち出した点ですが、一般的に規約上、クレジットカードは、カード会社から契約者に『貸与』されているものであり、所有権はカード会社にあります。

難しい問題ですが、親族相盗例が適用されるためには、犯人(夫)と占有者(Kさん)との間だけでなく、犯人と所有者(カード会社)との間にも親族関係がなければならないとされています(最高裁判所平成6年7月19日決定)。

そうするとKさんの夫の窃盗罪について、親族相盗例は適用されず、実際に処罰される可能性があることになります。また、ガソリンスタンドに対する詐欺罪については、被害者はお店ですから、親族相盗例は適用されません。

もっとも、実際問題として、配偶者名義のクレジットカードを利用し、それをお店側も黙認しているケースはあると思います。たとえ『他人名義のクレジットカードの利用』であったとしても、夫婦や親子のような近しい者の利用の場合に詐欺罪で処罰して良いのかという意見があります。一方、先ほど述べたように、配偶者や親子間の財産トラブルは絶えません。最高裁判所は、この議論に対して明確な判断をしていないので、未解決の問題といえます」

服部 啓一郎(はっとり・けいいちろう)弁護士
これまで刑事事件や債務整理事件を多数受任してきた。弁護士登録後1年で独立。2013年4月に、パートナーとして深澤諭史弁護士を迎える。現在は、刑事事件、IT関連事件、債権回収などを精力的に取り扱う。
事務所名:服部啓法律事務所

 

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