夫が妻の通帳を勝手に管理、犯罪に当たるか 夫婦間で窃盗や詐欺が成立する場合とは
Mさんは、偶然に暗証番号を知り、夫の目を盗んで金庫を開けているそうだ。この場合、結論に影響はあるのだろうか。
「影響はあります。なぜなら、金庫を開けられるのであれば、預金通帳などの占有が夫に移ったと言い切ることができるか、疑問が生じるからです。
一方、Mさんが暗証番号を知ったのは偶然であること、夫がいる前では金庫を開けられないという事情もあるので、夫に窃盗罪や横領罪が成立すると判断される可能性は残ります」
夫婦間の犯罪であっても、刑罰を受けるのだろうか。
「夫婦間、親子間などにおける窃盗、横領、詐欺罪については、刑罰を免除するという制度があります。『親族相盗例』(刑法244条ほか)といいます。
Mさんの預金通帳を夫が一方的に金庫に保管していることについて、犯罪が成立する可能性はありますが、刑罰は免除されるため、実際に処罰されることはありません。
夫婦や親子間の財産トラブルの相談が寄せられることは多いので、これで本当に良いのか疑問はあります。親族相盗例の廃止も含め、議論が必要でしょう」
妻名義のクレジットカードを勝手に使ったら?
次に、Kさん夫婦のように、妻名義のクレジットカードを無断で持ち出して利用することは犯罪になるのだろうか。
「まず、夫がクレジットカードを無断で持ち出した時点で窃盗罪が成立します。次に、ガソリンスタンドで妻名義のクレジットカードを使ったことについて、詐欺罪(刑法246条)が成立する可能性があります。
カード会社の規約では、名義人以外がそのクレジットカードを利用することは禁じられています。また、加盟店側(ガソリンスタンド)は、実際にクレジットカードを利用している人が名義人本人であるかどうか確認する義務があるとされています。
したがって、名義人本人以外が名義人本人と偽ってクレジットカードを利用して商品やサービスの提供を受けることは、取引の重要部分について嘘をついたことになり、詐欺罪が成立します(最高裁判所平成16年2月9日決定)」