夫が妻の通帳を勝手に管理、犯罪に当たるか 夫婦間で窃盗や詐欺が成立する場合とは
自宅で物がなくなったら、自分、あるいは外部から侵入した第三者、それとも他の家族を疑うでしょうか。インターネットのQ&Aサイトには、あろうことか、「配偶者に盗まれた」という夫婦トラブルが多数、寄せられています。
Mさんの家では、夫専用の金庫に、Mさんの通帳や印鑑、保険証などが入っており、何を言っても金庫を開けてくれないそうです。Mさんは偶然に金庫の番号を知り、隙を見て開けているそうですが、「夫が訴えたら私の窃盗罪は成立するのでしょうか?」と心配になっています。
また別のケースですと、Kさんという女性は、クレジットカードを「紛失」したことに気づき、カード会社に停止してもらいましたが、すでにガソリンスタンドで使われていたと言います。しかしその数日後、問い詰めた末に、夫の犯行だったことが明らかになりました。「夫に対してすっかり絶望して離婚も考えています」というKさん。
夫婦間においても、窃盗罪により刑罰を受けることがあるのでしょうか。服部啓一郎弁護士に聞きました。
預金通帳を金庫で管理、犯罪は成立する?
預金通帳、印鑑、保険証を、夫婦のどちらかが一方的に自分の金庫に保管すると犯罪が成立するのでしょうか。
「窃盗罪(刑法235条)とは、他人が占有(支配)する物を、無断で、自己の占有に移す行為であると考えられています。Mさんのケースでいえば、預金通帳は自宅から持ち出されていませんが、金庫に入れて施錠されると、Mさんが取り出すのは困難です。したがって、預金通帳が夫の管理する金庫に保管された時点で、預金通帳の占有が、夫に移ったと評価できます。
また、夫が預金通帳を出してくれないのは、Mさんの預金通帳などを持ち出して利用する目的があるからかもしれません。夫が、妻の預金通帳などを、一方的に自分の金庫に保管した行為には、窃盗罪が成立する可能性があります。
なお、最初に預金通帳などを金庫に保管するときはMさんも同意していたという場合は、夫に窃盗罪は成立しません。ただし、保管した後に何度頼んでも夫が金庫から出してくれなくなったという時点で、夫に、横領罪(刑法252条)が成立する可能性はあります」