「定義」がデジタルマーケの効果を決める理由 なぜ日本企業の施策は「不十分」なのか

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まあセールストークは致し方ないとして、そんなことはできない。出てくる答えは、「いろいろなことに興味関心を持つ、アクティブな20代女性」などといった、そうかもしれないがだから何?というような答えとなる。

仮にいい答えが出てきたり、マーケティング担当者の仮説が合っていたとしても、その後、ターゲット消費者にコミュニケーションを取ることができないことも多い。それは、消費者IDを取得していないからだ。

POSデータは、消費者の行動を表してくれるが、「誰が」というところまではわからない。せっかくのターゲット消費者絞り込みを生かすためには、その後のコミュニケーションまでデザインする必要がある。

全体像をイメージして、デザインする

マーケティング担当者がデジタルマーケティングを実行し、機能させるためには、マーケティング担当者自身が、デジタルマーケティングの全体像をイメージして、マーケティング活動をデザインしなければならない。なぜならば、Web広告企業も、データマイニング企業も、自社のサービスの範疇でしか、デジタルマーケティングを考えることができないからだ。

マーケティング戦略策定の全体像を示したフィリップ・コトラーの『マーケティング・マネジメント』は、世界各国のMBA履修者の高い支持を受けている。そこで、『マーケティング・マネジメント』のマーケティング戦略策定プロセスを土台として、デジタルマーケティングが、従来型マーケティングの何を変え、何をどう進化させるのかを学ぶと、デジタルマーケティングの全体像がわかりやすい。

「環境分析」「消費者理解」「セグメンテーション」「チャネル」「プロモーション」の5つの領域において、従来型のフレームワークを新たなフレームワークに置き換えて考えることで、「究極のOne to Oneマーケティング」を実現させる道筋が見えてくる。

2020年の企業の競争力は、デジタルマーケティングの巧拙により決定されるようになる。日本企業のビジネスパーソンの皆さんにも、デジタルマーケティングの定義を理解し、全体像をつかむことで、デジタルマーケティングを機能させ、競争力の向上に役立ててもらえることを期待している。

牧田 幸裕 名古屋商科大学ビジネススクール 教授

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まきた ゆきひろ / Yukihiro Makita

1970年京都市生まれ。京都大学経済学部卒業、京都大学大学院経済学研究科修了。ハーバード大学経営大学院エグゼクティブ・プログラム(GCPCL)修了。アクセンチュア戦略グループなどを経て、2003年日本IBM(旧IBMビジネスコンサルティングサービス)へ移籍。インダストリアル事業本部クライアント・パートナー。IBMでは4期連続最優秀インストラクター。2006年信州大学大学院経済・社会政策科学研究科助教授。2007年准教授。2018年より現職。名古屋商科大学では5年連続ティーチング・アウォード受賞。著書に『デジタルマーケティングの教科書――5つの進化とフレームワーク』(東洋経済新報社)などがある。

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