グーグル検索の先駆、大宅文庫の危機と意義 昭和を駆け抜けた評論家・大宅壮一の遺産
だから雑誌の記事ごとに分類した大宅文庫の検索システムは、大衆の“欲望”に沿ったキーワードが満載だ。大宅式分類法といわれ、人名での索引もあるが、面白いのは件名索引だ。
たとえば大分類「マスコミ」⇒ 中分類「刑事ドラマ、探偵ドラマ」⇒小分類「太陽にほえろ!」と引っ張り出せ、その時代を彩った出来事や流行がよみがえる。「犯罪・事件」⇒「スパイ・亡命」⇒「北朝鮮スパイ」というアプローチもあれば、「宗教・思想」⇒「オカルト、心霊術」⇒「超能力少年」なる分類も出てくる。
かつて大宅文庫には編集者やテレビマンが企画探しで通いつめ、そこから雑誌の特集や新番組が生まれた。この独自の検索方法は、ネット時代のいま、グーグルをはじめとする検索エンジンの先取りだったともいえる。
知りたい情報の断片的なキーワードを打つだけで、かゆいところに手が届くようにいくつもの項目が表示される。目的のデータだけではなく、その周辺の話題も目に飛び込み、さらに知見が広がるWeb検索の世界。特にグーグルのアルゴリズムは、大衆が求めている情報の最大公約数を反映した欲望の集積地へと案内する。まさに大宅文庫が培ってきた人間味あふれる時代の切り取り方と相通じるものがあるのだ。
なぜクラウドファンディングに踏み切ったか
その大宅文庫が経営難に見舞われた。日本随一の雑誌図書館の利用者は減り続け、昨年2016年で8万7000人。多い年で4000万円、年間2000万円の赤字が続き、内部留保の財源を取り崩しながら運営してきた。
公益財団法人という組織上、管轄する内閣府へ相談すると、寄付で賄うアドバイスを受けるが赤字を解消する額は集まらず、根本的な解決策にはならなかった。そこで選んだ最後の手段がクラウドファンディング。事業に賛同、出来上がったコンテンツやサービスを享受することを前提に、幅広い人たちからインターネットを通じ資金を募る仕組みだ。募集開始時に目標金額を設定し、到達しなかったらプロジェクト自体を見直すか、やめるか判断を迫られる。
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