私たちは「大人の脳」の使い方を知らなすぎる 10代半ば頃からは勉強法を変えるべき

拡大
縮小

Q. 反復練習 or 語呂合わせ 脳の効率がいいのはどっち?

大人にいいのは、「語呂合わせ」です。

子どもの頃は「神童」と呼ばれていたのに……という方、周りにいませんか? 自分がそうだった、という方もいるかもしれません。子どもの脳が得意としているのは、「機械的記憶」。これはまるで「コピペ(コピー・アンド・ペースト)」するかのように、物事を暗記する能力です。

ですから子どもの頃は、どんなことでもどんどん記憶できてしまいます。モンスターの名前をソラで言える子、昆虫にやたらと詳しい子、英語の歌を1回聞いただけで歌う子。これらは皆、機械的記憶のなせる技です(ですから親は「うちの子は天才!かも」と思ってしまうのですね)。

大人の脳は「とにかく全部覚える」というような力技を使わなくなります。もっと効率よく、物事を暗記しようと試みるのです。大人の脳は省エネなのですね(実際子どもの脳は、大人の2倍ほどのエネルギーが必要です)。

「連合記憶」を活用する

『「脳を本気」にさせる究極の勉強法』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

大人の脳が好んで使うのが「連合記憶」というもの。これは何かと何かを関連づけて覚える方法です。関連づけられるようになるためには、脳にある程度の知識がストックされる必要があります。機械的暗記から連合記憶に変わるのは、10代の半ばくらい。ですから、大学受験のときにはもう、連合記憶の活用を始めるのがいいのです。

語呂合わせは連合記憶を利用するうまいやり方です。「794(鳴くよ)うぐいす平安京」「1467(人の世むな)し、応仁の乱」。このような歴史の年号だけでなく、あらゆる暗記もので語呂合わせができないか、工夫してみるといいですね。私は英単語も語呂合わせで覚えました(笑)。数十年たった今でも忘れないのは、連合記憶を活用したからなのです。

大人には、大人用の勉強法があります。そしてそれを知ることは、今からでも遅くありません。なぜなら、脳は使い始めたその日、その瞬間から成長し始めるものだからです。あなたがあきらめることさえしなければ、脳の成長に終わりはないのです。

(構成:黒坂真由子)

瀧 靖之 東北大学加齢医学研究所教授、医師、医学博士

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

たき やすゆき / Yasuyuki Taki

東北大学加齢医学研究所機能画像医学研究分野教授。東北大学東北メディカル・メガバンク機構教授。脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達、加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍。読影や解析をした脳MRIはこれまでに16万人に上る。著書『生涯健康脳』(ソレイユ出版)、それを子育てに応用した『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える「賢い子」に育てる究極のコツ』は、それぞれ10万部を突破するベストセラーとなっている。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT