北陸新幹線が結ぶ「近くて遠かった」信越の絆 東京との観光客輸送とは違うもう一つの役割

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鉄道による地域づくりを語るスピーカーら=2017年7月(筆者撮影)

竹本社長は、鉄道ファン以外にも知られる銚子電鉄の奮闘ぶりを「救いは想定外のところから来る」などと熱くユーモラスな口調で伝えながら、あらゆる機会と情報、人、つながりを生かし切ることの意義を強調し、「地域商社・地域旅行会社・生活総合支援業」を目指すと語った。渡邉社長は、「はくたか」に代わる最速列車として、地域によっては今なお首都圏との最短輸送ルートを担う超快速列車「スノーラビット」の誕生を振り返り、「地元の熱い思いをいかに自分でつかむか。地元の宝の山を歩いて感じ取りたい」と力を込めた。

鈴木さんは、地元で生まれた「走る農家レストラン列車」企画が、北陸新幹線開業に合わせた「おいこっと」誕生につながった経緯や、回を重ねるごとにノウハウが蓄積されて、省力化とスムーズな運行、参加者の意識改革につながった様子を紹介した。新路さんは、地元で十数年前からサイクルトレイン構想が存在し、活動が途切れなかったことに加え、国のインバウンド対策や地元市町村の連携、JR西日本の担当者の熱意がかみ合って、念願の運行が実現したと報告した。

それぞれの駅を「テーマパーク」に

今回の交流会の性格を象徴していたのが、南魚沼市内の公園を拠点にマルシェを開くとともに、ほくほく線沿線で一箱古本市、演奏会、ミュージカルのフラッシュモブといったイベントにかかわってきた田村さんの言葉だった。

「私たちはディズニーランドにはなれないが、1日10杯のコーヒーなら淹れられる。そして、互いに電車でつながっている。ぶらぶら行く郊外型スーパーの代わりになりたい。そして、1日1杯でいいから、地元で購入されるコーヒーを、持続可能な方法で栽培されたコーヒーに入れ替えたい。多くの観光客が地元におカネを落としているのに、地元のポケットに穴が空いている。おカネを地域から外へ出さない、能力ある人が『消費するだけの人』にならない仕組みをつくりたい。それだけの力を、私たちは持っている」

北越急行と連携して「ほくほく列車の市」も開催している田村さんは「線路周辺の駅がそれぞれテーマパークになれば、沿線がつながって一つの大きな市になる」とビジョンを語る。毎回、ほぼ完売しているパン列車は「建築費がかからないテーマパークの一つ」だという。今年5月のパン列車では、上越市内のイベントとの連携が実現した。これは田村さんが第1回の交流会に登壇したことをきっかけに誕生した、交流の産物だ。交流会の活動は少しずつ、しかし確実に、地域を変えている。

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