新幹線が深めた「弘前と函館」の歴史的な縁 弘前大の学生は4人に1人が北海道出身

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弘前城の天守閣と満開のソメイヨシノ。奥は岩木山=2016年4月(筆者撮影)

北海道新幹線の開業から1年余りが経ち、2030年度の全線開業に向けて、JR北海道の将来像や札幌駅への新幹線乗り入れ方式をめぐる議論が活発化している。

これに対し、全ルートが確定した北陸新幹線沿線では、札幌開業より早い全線開業を求める声が上がる。2022年度の開業を目指して建設が進む九州新幹線・長崎ルートは、新幹線と在来線の両方に乗り入れられる「フリーゲージトレイン」(FGT)の導入が困難との見方が浮上し、運用形態そのものが不透明になってきた。

他方で、これら整備新幹線に続く新路線の着工を求める動きも、四国や山形で活発化している。2017年がこれほど、新幹線関連のニュースがわき上がる年になるとは予想できなかった。

「りんご色のまち」と函館の縁

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ただ、開業済みの地域も含めて、「新幹線を何にどう活用するか」という議論は、必ずしも全容が見えてこない。「東京までの最短時間短縮」や「交流人口の拡大」という物差しを、どこにどう当てはめるべきか。そんな問いにヒントを与えてくれそうな街が、青森県弘前市だ。新幹線の駅がないことをむしろ利点に、「新幹線のある未来」を積極的に模索し続けてきた。

北海道新幹線開業以前の取り組みは、本連載の第1回(「東北新幹線の延伸で沿線都市が得た『果実』 )で紹介したが、その後は函館市など道南との連携を精力的に進めている。「リンゴとお城のまち」の歴史と現状を、あらためて紹介しよう。

弘前市は人口約17万人、青森県津軽地方の中心都市だ。江戸時代初期、津軽氏の城下町として産声を上げた。国内のリンゴの2割を1市で生産し、「りんご色のまち」をキャッチフレーズに掲げる。国内有数の桜の名所として知られる弘前城は2011年に「築城400年」を迎えた。

弘前駅は1894(明治27)年に開業し、奥羽線で約37km離れた青森駅と結ばれた。2002年12月の東北新幹線・八戸開業後、初の特急定期列車「つがる」で八戸駅と直結した。現在の駅舎は4代目で2004年に完成した。

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