津軽海峡を挟んだ道南と青森県との間では、1873(明治6)年から定期航路で直結していた青森、函館両市が1989年、青函トンネル開通1周年を記念して「青函ツインシティ」盟約を締結していた。そこへ、弘前市と函館市の「津軽海峡観光クラスター会議」が加わり、さらに2013年には、青森、弘前、八戸3市と函館市とが「青函圏観光都市会議」を発足させて、交流のチャンネルが多層化した。2016年3月26日の北海道新幹線開業日には、各市がJR函館駅前にブースを並べ、PR活動を展開した。弘前市からは50人ほどが出向き、連携をアピールしたという。
「新幹線がなければ、弘前市民にとって、函館はいつまでもあこがれの『異国』のままだったのでは。今は、市内で函館市の人が飲む姿をみかけるのは珍しくもない。逆に、私たちが函館市内で飲むのも普通になった。それだけ精神的距離が近付き、官民それぞれの分野で交流が進んだ。交流のファーストステージは、『人と人とをつなぐ』ステージだった。これをどう活用するかが次のテーマだ」。弘前路地裏探偵団の鹿田団長は展望する。
「絶妙な立ち位置」で連携拡大
このような意識と動きとは、函館市側からはどう見えているのだろう。
函館市出身・在住で、両地域の連携事業などを手がけるプランナー田村昌弘さんは「弘前市は、新幹線の直接的なステークホルダーではない絶妙な立ち位置を存分に生かし、ウチ・ソト双方での展開を着々と進めてきた。ウチでは市や関係機関の中堅職員たちががっちりと手を組み、ソトでは函館地域との交流に力を入れ、さらには全国に向けて両地域の一体感をアピールしはじめた」と分析する。弘前大学を卒業し、地元へ戻った1人だ。
さらに田村さんは「函館・道南にとって『青森県との関係といえば、まずは青森市』というのがこれまでの空気だった。しかし、新幹線開業に向けた弘前市の動きがきっかけとなり、その呪縛が解けた。いまは青森市を飛び越え、県内の各市町村と気兼ねなく連携できるムードが生まれている。函館市には弘前市に縁のある人が多く、土地勘や郷土に対する想いなどを基底にした新たな動きが出てくれば、交流連携の伸びしろはまだある」とみる。
同じく函館市出身で、青森大学(青森市)を卒業後、「函館まちあるきガイド」として活動している土田尚史さんは、2015年から月1回、弘前市のコミュニティーFM局「FMアップルウェーブ」の番組に電話出演している。道南側の旬の話題を提供するのが役割で、「北海道新幹線開業で弘前と函館のつながりができると思い、出演を承諾した」という。
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