新幹線が深めた「弘前と函館」の歴史的な縁

弘前大の学生は4人に1人が北海道出身

北海道新幹線開業日の様子を振り返る弘前市役所の櫻田部長=2017年6月(筆者撮影)

弘前商工会議所、弘前観光コンベンション協会などは2006年、中小企業庁の補助を受け、2010年の東北新幹線・新青森開業に向けて「世界自然遺産『白神山地』のめぐみ開発プロジェクト事業」に着手した。

そして翌2007年には活動の一環として、市民生活向上と観光振興、物産開発を関連づけながら展開する施策「弘前感交劇場」を提唱し、2008年には行政と経済界、観光・物産業界、農業関係者、さらには弘前大学やNPO法人にまで広がるネットワークが誕生した。前後して、「りんごの花見」や、「弘前路地裏探偵団」の前身である「ひろさき街歩きガイド」などの試みもスタートした。

2010年12月4日、東北新幹線が新青森開業を迎え、弘前市一円は終点・青森市をはるかに超える祝賀ムードで沸き立った。その3カ月後、2011年3月11日に発生した東日本大震災によって、観光産業のみならず市民生活が大ダメージを受けたが、混乱を乗り越え、被災地支援にも携わってきた経緯は、本連載の第1回に記したとおりだ。

「新幹線駅がない街」同士の付き合い

そして、弘前市と函館市との交流が本格化したのも、この2011年だった。青森県と道南地区を主な営業エリアとする地方銀行・みちのく銀行(本店・青森市)が仲を取り持ち、弘前・函館の両商工会議所を軸に「津軽海峡観光クラスター会議」が発足した。函館市最寄りの新幹線駅・新函館北斗駅は、隣の北斗市に建つ。弘前、函館両市の交流は「新幹線駅がない街同士の付き合い」でもあった。

新青森開業を挟んで、両市は多様な交流を深めていく。函館市が発祥のイベント「バル街」を追う形で、弘前市でも2011年に「弘前バル街」がスタートした。また函館市の年末恒例イベント「はこだてクリスマスファンタジー」のオープニングセレモニーには2011年以降、「ひろさきナイト」と銘打って、弘前市民が参加している。2013年には、弘前路地裏探偵団から「のれん分け」する形で、函館市に「だいもん路地裏探偵団」が誕生した。

弘前市内の主要観光スポットでは、函館市の市電・バスの切符や観光施設で使用できる「はこだてスペシャルチケット」を販売しており、弘前市の一部施設でも利用可能だ。さらに、弘前市と道南の業者が提携して、土産菓子や日本酒の製造・販売も進んでいる。弘前商工会議所の木下課長は「弘前市も、英語が通じないインバウンド観光客が増え、対応が急務になってきた。先進地の函館市には接遇のノウハウなど、学ぶところが多い」と語る。

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