新幹線が深めた「弘前と函館」の歴史的な縁 弘前大の学生は4人に1人が北海道出身

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以前は津軽海峡線の夜行急行「はまなす」を使って弘前市まで出向き、スタジオ出演もしていた。しかし、北海道新幹線開業に伴って、「はまなす」も、道南で販売されていた津軽地方行きのJR企画切符もなくなった。時間面でも料金面でも弘前市を訪れにくくなったといい、「北海道新幹線を活用した、割安で周遊型の切符があれば」と漏らす。

土田さんに限らず、北海道新幹線の料金の高さを口にする人は少なくない。一方で「せっかくつながりができたのだから、安価なフェリーも使って、無理なく交流や周遊型観光を進めよう」という声も、弘前市内で何度か耳にした。北海道新幹線を最大限に活用しつつ、「乗車」には必ずしもこだわらない――。地元の柔軟な意識が見て取れる。

増えた観光客、山積する課題

弘前市の宿泊者数は、震災が発生した2011年の約50万6千人から、2016年には約61万8千人まで、一度も落ち込むことなく上昇してきた。とはいえ、インバウンドへの接遇をはじめ、県全体として進んでいないSuica対応、飲食店の禁煙・分煙推進など、課題は山積している。夜行急行「はまなす」の廃止が、弘前大学生の札幌圏での就職活動に悪影響を及ぼすという指摘もある。奥羽線のダイヤや車両への不満も根強い。

北海道出身の弘前大学生たち=2017年6月(筆者撮影)

弘前観光コンベンション協会の白戸大吾観光振興部長によると、札幌地区の中学校の修学旅行先は、関東が3分の1を占め、増加傾向にある。残り3分の2は、北海道新幹線の利便性を活用した東北コースだが、世界文化遺産・中尊寺を組み込める岩手県(盛岡・平泉)がベースとなり、秋田県や宮城県に流れる旅程が多いという。

「東京五輪開催が宿泊に影響を及ぼす2020年を見据えて、北海道地区からの誘致活動を継続する。青森県が先進的に取り組んでいる『アクティブラーニング(能動的学習)』を導入した教育旅行プログラム開発とファシリテーター育成を進め、関東圏の私立中学校、高等学校の誘致活動を強めたい」と白戸部長は戦略を語る。

筆者は本年度、弘前大学の非常勤講師として、約20人の学生たちの授業を受け持っている。「人口減少社会と新幹線」をテーマに、課題や解決法を検討する内容だ。履修者の3分の1は北海道出身。彼らが故郷と弘前市とのつながりに、どんなアイデアを披露してくれるか、心待ちにしている。

櫛引 素夫 青森大学教授、地域ジャーナリスト、専門地域調査士

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くしびき もとお / Motoo Kushibiki

1962年青森市生まれ。東奥日報記者を経て2013年より現職。東北大学大学院理学研究科、弘前大学大学院地域社会研究科修了。整備新幹線をテーマに研究活動を行う。

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