縮小策だけではジリ貧、ルネサスの前途多難 工場閉鎖へ地ならし
終わらない人員削減
昨年9月に7511人の希望退職を実施したルネサスだが、9月末に3000人超の追加リストラを予定する。さすがに「募集人数が集まらず、肩たたきが頻繁に行われている」(ルネサス社員)。一部の特約店に人員受け入れの打診も行われた。
2年前、ルネサスはリストラの一環で複数の大手特約店に人員を送り込んだ。100人規模の出向者を受け入れた特約店もある。最終的に各社数十人が転籍した。
しかし、今回は「生産終了の説明と値上げ交渉で手いっぱい。今後の売り上げ減は避けられず、ルネサスからの人員は到底受け入れられない」と特約店側も困り果てている。
日立製作所、三菱電機、NECの三社の半導体事業が統合してできたルネサス。各社から引き継いだ工場再編の遅れが経営不振の一因でもあった。ようやく閉鎖を決定し、顧客と交渉に入ったことは評価できる。ただ、工場閉鎖は顧客に対する供給責任のみならず、多くの雇用を奪うなど地域への影響は甚大だ。避けられるに越したことはない。
山形・鶴岡工場。主力だった任天堂向け半導体が落ち込み、赤字に苦しんでいる。一時は海外企業への売却を模索し、本誌でたびたび報じたように独立の動きもあった。が、どちらもまとまらないまま3年内の閉鎖が公表された。鶴岡の主要設備は那珂工場に移設、残りは中古市場で売却となる予定だ。
実は、1月ほど前に国内大手メーカーから鶴岡工場での大口受託製造の依頼があった。しかし、鶴丸社長が即座に断ってしまったという。「大口注文があったからといって工場を残すべきとはならない」(ルネサス関係者)との声もある一方、鶴岡独立計画を知る関係者は、「この案件があれば一定以上の稼働率が見込め、独立の実現性は高まる。鶴岡工場を切り離しを認めれば、ルネサスはリストラを達成できる上、工場閉鎖も避けられたのに……」と落胆する。
現在、ルネサスの経営を主導するのは、9月末までに1383億円を出資し、持ち株比率69%の筆頭株主となる予定の産業革新機構。オムロン会長から6月末にルネサスに転じた作田会長も、機構が送り込んだ。
特約店に対する説明の中では、ルネサス担当者が「(一連の構造改革は)産業革新機構から言われたものであり、出資が無事に実行されるようご協力をお願いします」といった発言も飛び出した。
機構はさらなるリストラを進める腹づもりだ。「(ルネサステクノロジとNECエレクトロニクスの)統合前のピークから売上高は3分の1になっている。まだ人は多い」と作田会長は明言している。
今後もリストラは避けられないが、縮小策だけではジリ貧となってしまう。ルネサス経営陣が希望を語れる日は来るのだろうか。
(撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済2013年8月31日号)
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