縮小策だけではジリ貧、ルネサスの前途多難 工場閉鎖へ地ならし
値上げ交渉も開始
説明会でルネサスは、値上げに応じるなら生産継続の可能性があると顧客と交渉するよう特約店に求めた。しかし、「大半は他社製半導体で間に合ってしまう。値上げよりも取引停止を選ぶ顧客のほうが多いと思う」と、ある特約店幹部は嘆息する。
ルネサスが強みとする自動車用マイコンは生産を継続する那珂工場の製品であり、値上げ交渉の対象外。世界シェア4割の強い製品こそ本来値上げが可能なはずだが、そこには手をつけないままだ。
ルネサスは国内で、一部を除いて特約店16社を経由する販売体制を敷いてきた。顧客に対して技術的なサポートは行うが、取引条件の交渉にルネサスはタッチしない。それどころか特約店とのやり取りも子会社のルネサスエレクトロニクス販売に任せる、3層構造となっている。ルネサス元役員は、「ルネサスは顧客との距離が遠いためにマーケティング力が弱く、製品開発力がない。これが顧客の言いなりになる下請け体質につながった」と指摘する。
この問題にもようやく手をつける。10月にルネサス販売を本社へ吸収合併する。ただ、「顧客との価格交渉の場に、ルネサスは同席させない。われわれの手の内を見せるわけにはいかないから」(複数の特約店)と、3層から2層に変わったところで、問題は解決しない。今後の工場リストラを大きく左右する値上げ交渉や生産終了品目の説明は、従来どおり特約店に丸投げしたままだ。