ミシュラン掲載店が集う「食フェス」の実力

1皿1000円の料理はどこまで「本物」なのか

今回のフェスの最大のポイントは、「ミシュラン」という冠がつきながらも、1皿1000円から味わえるという「値頃感」だろう。「気軽にミシュラン」がコンセプトであるフェスでは、全店舗が1000円、あるいは2000円の料理を用意。そのレストラン自慢の特別なトッピングを足す場合、1000円追加するという仕組みになっている。

「リストランテツヅキ」の「黒毛和牛のボロネーゼ」(1000円、写真:ミシュランガイド・フードフェスティバル実行委員会)

たとえば、目黒・都立大学のイタリアン「リストランテツヅキ」の定番人気メニュー「黒毛和牛のボロネーゼ」は1皿1000円だが、ここへトリュフを足す場合は2000円。中目黒の1つ星店フレンチ「クラフタル」の「十勝ハーブ牛のクラブサンド」は2000円で、これにフォアグラとトリュソースを足す場合は3000円と、いずれも店舗の味を手頃に食せる。

「クラフタル」の「十勝ハーブ牛のクラブサンド」(2000円)には、大行列ができていた(写真:ミシュランガイド・フードフェスティバル実行委員会)

「大学生のカップルが気張らずにミシュランを楽しんでくれたらうれしい」(北川氏)との言葉どおり、客層も広い。開催2日目となった18日には、オープンの10時前から人が並び始め、開場と同時に人気店には行列ができたが、そこには若いカップルから親子連れ、老夫婦と幅広い年代の人たちが並んでいた。

ミシュランフェス「独特」の風景とは

ところで、北川氏は開催初日、面白いことに気がついた。多くの参加者が複数の店の料理を購入して、シェアしていることだ。中には、全店舗を「制覇」した夫婦もいたそうで、「これはほかの食フェスではあまり見られない現象」(北川氏)だという。また、わざわざ赤レンガ倉庫が背景になるように各店舗を並べたことが奏功して、通常のフェス以上に、料理や会場の写真を撮る人も多いようだ。

4日間で10万人以上の来場者を見込むという今回のフェスだが、ここに至るのはそう簡単でなかった。そもそも、ミシュランに掲載されている店は、予約の取れないような人気店が多いだけに、わざわざフェスに出店する必要はない。夫婦2人で切り盛りしているような店舗も少なくなく、持ちかけても「『そんなのひっくり返ってもできない』と断られたこともある」(北川氏)。

「初日は7000人の来場者を見込んでいる、と説明したが、それには何の保証もないし、『この人はどんな大風呂敷を広げているんだ』という感じだった」(北川氏)。それでも、目当ての店舗に通いつめ、説明を繰り返した。

中には、厨房設備を心配する店もあったが、「たとえば、通常の350度ではなく、450度でピザを焼けるオーブンが必要だと言われたら、日本中を探し回って確保した。そうすることで出店していただける環境を整えた」(北川氏)という。各店舗が店で出しているのと同じ質の料理を提供できるようにこだわった結果、運営コストは、北川氏が通常開催する食フェスの1.5倍〜2倍近くかかることになった。

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